円高でS&P500の利益は消える?「円高=日本株安」は本当?1973年以降の円高76回で検証
- 1973年以降の急な円高(3か月で5%以上)76回
- 円高の最中に円建てS&P500が下落76回中61回
- S&P500が10%上昇でも利益ゼロのドル円139.6円153.51円基準
- 円高の最中に日経平均が上昇(2010年代)14回中2回1970年代は8回中7回
一言結論
急な円高の最中、円建てのS&P500は約8割の局面で下落した。「円高=日本株安」は昔からの常識ではなく、2000年代以降、特に米金利が下がる中での円高で多く見られた姿だった。
S&P500やオルカンを持っている人にとって、円高は何を意味するのでしょうか。そして、よく言われる「円高になると日本株は下がる」は本当なのでしょうか。1973年の変動相場制への移行から2026年までの53年間で、3か月で5%以上の円高が起きた局面を76回数え、1回ずつ調べました。
この記事の結論
- S&P500が10%上がっても139.6円で利益ゼロS&P500が10%上がっても、ドル円が153.51円から139.6円まで円高になれば、円建ての利益はゼロになります。
- 円高の最中は76回中61回で円建て下落急な円高の76回の最中、円建てのS&P500は76回中61回、約8割の局面で下落していました。S&P500自体が上がっていた45回に限っても、円建てでマイナスだったのは30回です。
- 円高で日本株安になったのは2000年代以降「円高=日本株安」は昔からの常識ではありませんでした。円高の最中に日経平均が上がった回数は、1970年代は8回中7回、1980年代は18回中13回で、下がる方が多くなったのは2000年代以降です。
- 米金利の方向で日経平均の結果が分かれた1997年以降の37回を米10年債利回りの方向で分けると、米金利が下がる中の円高(26回)では日経平均の上昇は4回だけ、米金利が上がる中の円高(11回)では7回でした。
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検証条件・計算方法を見る
3か月(63取引日)で5%以上の円高が起きた局面を、1973年3月から重複なしで数えると76回ありました。局面の最中(起点から63取引日の判定期間の終了日まで)の値動きは次の通りです。
3か月は63取引日、1年は252取引日で計算しています。「局面終了」は判定期間の終了日で、実際の円高トレンドの終わりではありません。
円高でS&P500の利益が消える仕組み
円建てのリターンは、2つの数字の掛け算で決まります。
円建てリターン =(株の倍率)×(為替の倍率)− 1
株の倍率:S&P500が何倍になったか(10%上がったなら1.10)
為替の倍率:終了時のドル円 ÷ 開始時のドル円(160円が150円になったなら0.9375)
たとえばS&P500が10%上がり、その間にドル円が160円から150円に円高になると、1.10×0.9375−1で、円建てのリターンは+3.1%です。株では10%増えたのに、円高で約7%分が消え、手元に残るのは約3%です。
では、利益がゼロになるのは何円か。2026年9月8日のドル円153.51円を基準にすると、次のようになります。
| S&P500の上昇率 | 円建ての利益がゼロになるドル円 |
|---|---|
| +5% | 146.2円 |
| +10% | 139.6円 |
| +15% | 133.5円 |
| +20% | 127.9円 |
※基準は2026年9月8日14時24分時点のドル円153.51円です。
検証1:ドルで儲かったのに、円で損をした頻度
1年間持ったときに、S&P500がドル建てではプラスなのに、円建てではマイナスになったことがどれくらいあったか。すべての営業日を起点にして数えました。
表は横にスクロールできます
| 期間 | S&P500(価格指数) | S&P500(配当込み) |
|---|---|---|
| 1973〜1996年 | 30.8%(およそ3回に1回) | 29.5%(1988年以降) |
| 1997〜2026年 | 9.8%(およそ10回に1回) | 8.8% |
※S&P500がドル建てでプラスだった1年間のうち、円建てではマイナスだった割合です。
1997年以降では、ドル建てでプラスになった1年間のうち、およそ10回に1回が円建てではマイナスでした。配当を含めて計算しても頻度はほぼ同じで、配当では埋まりません。1973年から1996年までは、およそ3回に1回でした。途中に円安の時期を挟みながらも、ドル円が260円台から1995年の80円前後まで大きく円高に進んだ時代です。
検証2:急な円高76回の最中に起きていたこと
3か月(63取引日)で5%以上の円高が起きた局面を、1973年3月から重複なしで数えると76回ありました。局面の最中(起点から63取引日の判定期間の終了日まで)の値動きは次の通りです。
表は横にスクロールできます
| 76回の円高局面の最中に | 上昇した回数 | 下落した回数 | 騰落率の平均 |
|---|---|---|---|
| S&P500(ドル建て) | 45回 | 31回 | +0.5% |
| 日経平均 | 38回 | 38回 | +0.3% |
| S&P500(円建て) | 15回 | 61回 | −5.7% |
S&P500はドル建てで76回中45回上昇しており、ほぼ普通の相場です。ところが円建てでは、76回中61回、約8割の局面で下がっていました。S&P500自体が上がっていた45回に限っても、円建てでマイナスだったのは45回中30回です。ドルで儲かっていても、3回に2回は円で損をしていました。
3つの実例
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| 局面 | 円高の幅 | S&P500(ドル) | S&P500(円建て) | 補足 |
|---|---|---|---|---|
| 1998年9〜12月(LTCM危機) | −10.6% | +18.1% | +5.6% | 株の上昇が円高に勝った |
| 2008年10月〜翌1月(リーマン・ショック) | −7.7% | −6.2% | −13.4% | 株安と円高のダブルパンチ |
| 2024年5月〜8月2日 | −5.3% | +3.1% | −2.4% | 下の投資信託を参照 |
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| 2024年の高値→8月5日 | 高値 | 8月5日 | 下落率 |
|---|---|---|---|
| eMAXIS Slim 米国株式(S&P500) | 32,813円(7月11日) | 28,019円 | −14.6% |
| eMAXIS Slim 全世界株式(オルカン) | 27,282円 | 23,268円 | −14.7% |
※投資信託は三菱UFJアセットマネジメントが公表している基準価額(分配金再投資)です。
ドル以外の通貨も含むオルカンも、下落幅はS&P500とほぼ同じでした。
円高局面が終わった後の1年間
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| 局面終了後の1年間(252取引日) | 上昇した回数 | 下落した回数 |
|---|---|---|
| S&P500(ドル建て) | 63回 | 13回 |
| 日経平均 | 54回 | 22回 |
| S&P500(円建て) | 52回 | 24回 |
円高の最中は円建てのS&P500が約8割の局面で下落し、局面が終わった後の1年間は約7割の局面で上昇していました。ただし、「上昇した」というだけで、円高で失った分まで戻したという意味ではありません。円高局面が始まる前の水準まで、1年後に円建てで戻っていたのは76回中41回でした。
※「局面終了」は63取引日の判定期間の終了日のことで、実際の円高トレンドの終わりを意味するものではありません。
検証3:「円高=日本株安」はいつから本当になったか
円高になると、輸出企業がドルで稼いだ利益が円で目減りし、業績が悪くなって株価が下がる。これが通説です。76回の円高局面で、その最中に日経平均が上がっていた回数を年代ごとに数えました。
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| 年代 | 円高局面の数 | 日経平均が上昇した回数 |
|---|---|---|
| 1970年代 | 8回 | 7回 |
| 1980年代 | 18回 | 13回 |
| 1990年代 | 18回 | 9回 |
| 2000年代 | 14回 | 5回 |
| 2010年代 | 14回 | 2回 |
※2020年代は4回(上昇2回)で、回数が少ないため表から除いています。
輸出企業が日本経済の主役だった1970年代・80年代は、円高の最中に日経平均は8割方上がっていました。通説とは逆です。たとえばプラザ合意の直後(1985年9〜12月)は12.5%の円高でしたが、日経平均は3.5%上昇し、その1年後には42.8%上昇しています。続く12月から翌年3月には13.8%の円高になりましたが、日経平均は11.6%上昇しました。
そして新しい年代になるほど、円高の最中に日経平均が上がる回数は減り、2010年代には14回中2回になりました。データ上、円高局面で日経平均が下がる方が多くなったのは、2000年代以降です。
米10年債利回りの方向で分けると、結果は真逆に分かれた
円高の起き方は一つではありません。ただ、一つ一つの円高の原因を判定するのは難しいため、原因は推測せず、その判定期間中に米国の10年債利回りが下がったか上がったかだけで、1997年以降の37回を2つに分けました。
表は横にスクロールできます
| 1997年以降の37回 | 米金利低下型(26回) | 米金利上昇型(11回) |
|---|---|---|
| 局面中:日経平均が上昇 | 4回 | 7回 |
| 局面中:日経平均の騰落率の平均 | −8.0% | +5.2% |
| 局面中:S&P500(ドル建て)が上昇 | 11回 | 9回 |
| 局面中:S&P500(円建て)が下落 | 22回 | 9回 |
| 局面終了後1年間:円建てS&P500が上昇 | 19回 | 10回 |
| 局面終了後1年間:円建てS&P500の平均 | +11.6% | +13.4% |
| 局面終了後1年間:円建てがマイナスのまま | 7回 | 1回 |
日本株については、米金利が下がる中での円高では26回中4回しか上がらず、米金利が上がる中での円高では11回中7回上がりました。一方、円高の最中に円建てのS&P500が下がる点は、どちらの型でも変わりません(26回中22回、11回中9回)。
違いが出るのは、その後です。局面終了後の1年間で円建てS&P500が上昇したのは、米金利低下型で26回中19回、米金利上昇型で11回中10回でした。1年たってもマイナスのままだったのは、低下型が26回中7回、上昇型は11回中1回です。米金利低下型の円高ではS&P500自体が下がっている局面が半分以上あり、上昇型ではS&P500自体は11回中9回上がっていました。
原因は推測していませんが、1997年以降、米金利の方向で日経平均の結果がこれだけ大きく分かれた、というのがデータの事実です。
2026年9月8日時点の当てはめ
表は横にスクロールできます
| 7月28日 | 9月8日 | 変化 | |
|---|---|---|---|
| ドル円 | 163.84円 | 153.51円 | −6.3%(円高) |
| 日本10年債利回り | 2.77% | 2.90% | +0.13ポイント |
| 米10年債利回り | 4.61% | 4.78% | +0.18ポイント |
| 日経平均 | 62,364円 | 66,163円 | +6.1% |
| S&P500(9月4日まで) | 7,429 | 7,719 | +3.9% |
※ドル円・日経平均は9月8日14時台の値。米10年債利回りとS&P500は9月4日の終値です。
7月28日以降の円高は、日米とも金利が上がる中で起きており、この物差しでは暫定的に米金利上昇型に当たります。ただし、過去の局面と同じ63取引日の判定期間には達していない、途中経過です。円高の中で日経平均もS&P500も上がっている値動きは、米金利上昇型の過去11回と、この時点では一致していました。
円高が続く中で米10年債利回りが7月28日の4.61%を下回れば、分類は米金利低下型に変わり、参照すべき過去も切り替わります。予想ではなく、分類が変われば参照する統計も変える、という手順です。
投資信託の実物でも確認
表は横にスクロールできます
| 8月14日→9月7日 | 8月14日 | 9月7日 | 変化 |
|---|---|---|---|
| eMAXIS Slim 米国株式(S&P500) | 45,727円(高値) | 44,308円 | −3.1% |
| eMAXIS Slim 全世界株式(オルカン) | 39,019円 | 38,002円 | −2.6% |
| (参考)ドル円 | 159.32円 | 154.34円 | −3.1%(円高) |
| (参考)S&P500(9月4日まで) | 7,786 | 7,719 | −0.9% |
※基準価額は前営業日の米国の終値を反映するため、指数の計算とは1日ずれます。
同じ期間の3.1%の円高に対して、基準価額も約3%下がっており、今回の円高が円建ての評価額を押し下げていることが確認できます。
すでに持っている人と、これから積み立てる人
同じ円高でも、立場で意味が変わります。すでに持っている人にとって、円高は円換算の評価額を押し下げる要因です。76局面の最中に円建てでプラスだったのは、76回中15回だけでした。
これから積み立てる人にとっては、円高になれば同じ1万円で、より多くのドル資産を買えます。米金利上昇型の11局面では、局面が終わった後の1年間で、11回中10回、円建てS&P500が上昇していました。ただし、これは「円高の途中で買った人の1年後」の統計ではありません。
まとめ
円高の最中、円建てのS&P500は76回中61回、約8割の局面で下がっていました。米10年債利回りの方向で分けても、この点は変わりません。
一方、「円高で日本株が下がる」は、2000年代以降の、しかも米金利が下がる中での円高で多く見られた姿でした。米金利が上がる中での円高では、日経平均は11回中7回上昇し、局面が終わった後の1年間では、円建てS&P500も11回中10回上昇していました。同じ円高でも、起き方によって日本株の反応は大きく違いました。
日本株が円高にどう反応するかを見るときは、円高の大きさだけでなく、それが米国の金利が下がる中で起きているのか、上がる中で起きているのかを見る必要があります。
この検証の限界
この記事の数字を読むときは、次の点に注意してください。
- 1997年以降を米金利の方向で分けた2つの型は、26回と11回で、特に米金利上昇型は事例が多くありません。
- 米金利の方向による分類は、原因を示すものではありません。
- S&P500は配当を含まない価格指数で計算しています(配当込みでも、ドル建てプラス・円建てマイナスの頻度はほぼ同じでした)。
- 3か月は63取引日、1年は252取引日で計算しています。「局面終了」は判定期間の終了日で、実際の円高トレンドの終わりではありません。
- 2026年9月の当てはめは9月8日時点の途中経過で、その後の値動きは反映していません。
- 本記事は過去データの検証であり、将来の値動きを保証するものではありません。また、特定の商品の売買を推奨するものではありません。
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最終更新:2026/10/10 | データの時点:検証は2026年9月8日まで。「今回」の数字は9月8日時点(S&P500と米10年債は9月4日終値)
