無料会員登録

日本市場・日銀・為替

積立投資なら為替は誤差?S&P500を10年・20年・30年、延べ1,209ケースで検証

  • 検証期間1973年3月〜2026年8月
  • 対象S&P500(配当込み)、ドル円
  • 最終更新2026/10/10

一言結論

積立の入口では為替はならされるが、最後の評価に使う為替は1つしかないため、30年積み立てても為替の影響は消えなかった。ただし20年・30年で為替が変えたのは「儲かるかどうか」ではなく「いくら儲かるか」だった。

「積立投資では、為替変動は誤差の範囲だ」。S&P500やオルカンを積み立てている方なら、一度は聞いたことがあるかもしれません。毎月コツコツ買っていれば、円高の月も円安の月もあるので、為替はならされて消えていく、という話です。

本当でしょうか。10年積み立てれば、為替の影響は消えるのか。20年なら、30年なら消えるのか。1973年から2026年までのデータを使い、積立を始める月を1か月ずつずらしながら、10年・20年・30年の積立を延べ1,209ケース、すべて計算しました。

この記事の結論

  1. 30年でも為替の影響は消えない10年・20年・30年のどの期間でも、為替の影響は消えませんでした。30年積み立てても、為替の影響が±10%以内に収まったのは283通り中80通り、10通りに3通りほどでした。
  2. 理由は出口の為替が1つしかないこと積立の入口では為替はならされますが、最後の評価額には、終了時点の為替が一度に効きます。これが、長期積立でも為替の影響が消えない理由です。
  3. 20年・30年で為替が変えたのは「いくら儲かるか」ただし、20年と30年の積立では、為替のせいで利益が損失に変わったケースも、円建てで元本割れしたケースも、今回の検証ではありませんでした。為替が大きく変えたのは「儲かるかどうか」ではなく「いくら儲かるか」です。
  4. 今の20年積立には上から2番目の追い風2026年8月末で終わる20年積立は、為替が動かなかった場合と比べて評価額が59.1%上振れしており、403通りの中で上から2番目の大きさでした。
検証条件・計算方法を見る
項目内容
積立の方法毎月1万円を、その月のドル円でドルに替えてS&P500を購入。配当は再投資。10年・20年・30年続けて、最後にその時のドル円で円に換算
比べる2つの結果①実際の為替で積み立てた円建ての結果、②ドル円が最初から最後まで1円も動かなかった場合の結果
為替の影響①が②より何%多いか(プラスなら追い風、マイナスなら逆風)
検証期間1973年3月(変動相場制への移行後)〜2026年8月
ケース数10年:523通り(2016年9月開始まで)、20年:403通り(2006年9月開始まで)、30年:283通り(1996年9月開始まで)

※各月のS&P500とドル円は月末値。1988年以降はS&P500の配当込み指数(トータルリターン)、1973〜1987年はシラー氏の月次の価格・配当データを使って配当再投資の系列を作り、つなげています。手数料・税金は考慮していません。オルカンも為替の影響を受けますが、長期のデータが取れるS&P500で検証しています。

なぜ積立に為替が関係するのか

為替ヘッジなしのS&P500の投資信託は、実質的にドル建てのアメリカ株に投資しています。一方で、私たちが見ている基準価額は円です。基準価額を計算するとき、ドル建ての資産はその時点のドル円のレートで円に換算されます。S&P500が同じでも、1ドル160円のときと150円のときでは、円での評価額が違います。これが、為替がリターンに影響する理由です。

積立の場合、1ドル100円の月に買うこともあれば、120円の月も150円の月もあります。ドルを買う値段が時間で分散されるので、積立の入口では確かに為替はならされます。では、20年後、30年後に積み上がったドル資産を、最後に何円で円に換算するのか。この問いを頭に置いて、数字を見ていきます。

基本結果

10年積立(523通り)

10年積立結果
為替の影響の大きさ(プラス・マイナスを合わせた大きさの真ん中の値)16.5%
±10%以内に収まった523通り中178通り(3分の1)
10%を超えて違った523通り中345通り
為替の影響の幅−44.2%〜+40.0%

表は横にスクロールできます

実例為替が動かなければ実際の円建て
1978年1月〜1987年12月(最もマイナス)元本の2.25倍元本の1.25倍
2014年7月〜2024年6月(最もプラス)元本の2.09倍元本の2.92倍

※倍率は、元本(1万円×120か月)に対する最終評価額です。

基本結果

20年積立(403通り)

20年積立結果
為替の影響の大きさ(真ん中の値)24.0%
±10%以内に収まった403通り中116通り
為替の影響の幅−60.7%〜+61.6%

表は横にスクロールできます

2つの実例1975年5月〜1995年4月2006年7月〜2026年6月
為替が動かなければ元本の5.03倍元本の4.75倍
実際の円建て元本の1.98倍元本の7.67倍
20年間のドル円の単純平均191円113円
終了時のドル円84円163円

どちらも、S&P500の部分だけならおよそ5倍です。株の成績は近いのに、円建ての結果はおよそ2倍と、およそ7.7倍に分かれました。この差を生んだのが為替です。

基本結果

30年積立(283通り):それでも消えなかった

30年積立結果
為替の影響の大きさ(真ん中の値)37.9%
±10%以内に収まった283通り中80通り(10通りに3通りほど)
為替の影響の幅−52.8%〜+51.7%

表は横にスクロールできます

2つの実例1981年8月〜2011年7月(最もマイナス)1994年7月〜2024年6月(最もプラス)
為替が動かなければ元本の5.26倍元本の5.97倍
実際の円建て元本の2.48倍元本の9.05倍
30年間のドル円の単純平均136円111円
終了時のドル円77円161円

表は横にスクロールできます

為替の影響の大きさ10年(523通り)20年(403通り)30年(283通り)
±10%以内178通り116通り80通り
10%超〜20%以内121通り49通り11通り
20%超224通り238通り192通り

30年積み立てても、為替は誤差ではありませんでした。なお、為替の影響の大きさの真ん中の値は、10年で16.5%、20年で24.0%、30年で37.9%と、期間が長いほど大きくなっています。しかし、これは「長く積み立てるほど為替の影響が大きくなる」という意味ではありません。10年・20年・30年で、含まれている時代がそれぞれ違うからです。大事なのは、30年に延ばしても為替の影響が消えなかったことです。

この検証の核心

なぜ消えないのか:最後の為替は1つしかない

入口:毎月の購入出口:最後の評価
10年で120回、20年で240回、30年で360回。100円の月も150円の月もあり、ドルを買う値段は分散される積み上がったドル資産の全部を、終了時点の1つのレートで円に換算する

入口の為替は何百回にも分散されますが、最後の評価額には、終了時点の為替が一度に効きます。1981年に始めた30年間では、ドル円の単純平均が136円だったのに対し、終わったときは77円でした。1994年に始めた30年間では、単純平均111円に対し、終わったときは161円でした。同じS&P500を30年積み立てて、この差です。

※この検証は、10年後・20年後・30年後の評価額を、その時点の為替で測っています。

この検証の核心

為替が変えるのは「儲かるか」ではなく「いくら儲かるか」

では、積立はやめた方がいいのでしょうか。そうではありません。為替のせいで、儲かるはずが損になった(または損のはずが儲かった)という、損益のプラスとマイナスが入れ替わったケースを数えました。

表は横にスクロールできます

1973年以降の検証10年(523通り)20年(403通り)30年(283通り)
為替で損益のプラス・マイナスが入れ替わった27通り00
円建てで元本割れ39通り00
為替の影響の幅−44.2%〜+40.0%−60.7%〜+61.6%−52.8%〜+51.7%

20年と30年の積立では、為替で利益が損失に変わったケースも、円建てで元本割れしたケースも、1973年以降の今回の検証ではゼロでした。為替が大きく変えたのは、儲かるかどうかではなく、いくら儲かるかです。20年積立の2つの実例のように、2倍で終わるのか7倍を超えるのか。その差を、為替が左右していました。

追加検証 1

今、積み立てている人はどこにいるか

2026年8月末で終わる積立を、同じ物差しで測りました。10年前、20年前、30年前に始めて、8月末まで続けてきた場合の数字です。

表は横にスクロールできます

2026年8月末に終了開始月為替の影響順位(上から)
10年積立2016年9月+35.0%523通り中9番目
20年積立2006年9月+59.1%403通り中2番目
30年積立1996年9月+46.9%283通り中6番目

2006年9月から20年間積み立ててきた場合、為替が動かなかった場合と比べて、円建ての評価額は59.1%上振れしています。この20年間のドル円の単純平均は113円、8月末は約160円でした。今の積立投資家の評価額には、過去53年でほとんど例のない大きさの、円安の追い風が乗っていることになります。

そして9月に入り、円は一時152円台まで円高に動きました。為替が動けば、この上振れも大きく変わります。153円台で計算すると、20年積立のおよそ6割の上振れは、およそ5割まで縮みます。

※153円台での数字は、9月上旬時点の為替で計算した概算です。

追加検証 2

為替ヘッジありを選ぶべきか

為替ヘッジありの投資信託は、為替の変動による影響を抑える仕組みを持った商品で、この記事で見てきた「為替の影響」を小さくできます。ただし、ヘッジには費用がかかり、一般には日本とアメリカの金利差に相当する分が、その大きな要因になります。

ヘッジありとなしのどちらが有利かは、①何年持つのか、②そのお金をいつ、何に使うのか、③そのときの日米の金利差がどうなっているか、で答えが変わります。答えは一つではありません。

まとめ

積立の入口では、為替はならされます。しかし最後の評価額には終了時点の為替が効くので、10年・20年・30年と積み立てても、為替の影響は消えませんでした。30年積立でも、為替の影響が±10%以内に収まったのは283通り中80通りだけです。

ただし、20年と30年の積立で為替が変えたのは、儲かるかどうかではなく、いくら儲かるかでした。為替で利益が損失に変わったケースも、円建てで元本割れしたケースも、1973年以降の今回の検証では1つもありませんでした。

そして今、20年積立をしている方の評価額は、為替が動かなかった場合と比べておよそ6割上振れしており、403通りの中で上から2番目です。この上振れは、9月の円高で縮み始めています。評価額のうち、為替による上振れがどれだけあるのかは、知っておいたほうがいい数字です。

この検証の限界

この記事の数字を読むときは、次の点に注意してください。

  • 開始月を1か月ずつずらしているため、それぞれのケースの期間は大きく重なっています。たとえば30年積立の283通りは、隣り合うケースで29年11か月分が同じ期間です。ケースの数は、互いに独立した試行の数ではありません。
  • 「20年・30年で元本割れ0」は、1973年以降の米国株と円相場という、1つの歴史の結果です。将来も同じになるとは限りません。
  • 10年・20年・30年で含まれる時代が違うため、期間の長さどうしで為替の影響の大きさを比べることはできません。
  • 1973〜1987年は、シラー氏のデータから作った配当再投資の系列を使っています。手数料・税金は考慮していません。
  • 本記事は過去データの検証であり、将来の値動きを保証するものではありません。また、特定の商品の売買を推奨するものではありません。

新しい統計検証の公開を受け取る

この記事の内容をまとめた保存版PDFは、無料会員登録でダウンロードできます。

無料会員登録(無料)

この会員登録は、堀江投資塾の会員登録となります。登録すると、堀江投資塾からのさまざまなメールサービスや、無料動画の視聴サービスが受けられます。

最終更新:2026/10/10 | データの時点:検証は2026年8月末まで。9月の円高の数字は9月上旬時点の概算