無料会員登録

金利と株価親記事

金利上昇は株価にとって危険か?米10年債の「5%突破」と「金利急騰」を1962年以降のデータで検証

  • 検証期間1962年1月〜2026年9月10日
  • 対象米10年債利回り、S&P500、NASDAQ総合
  • 最終更新2026/10/10

一言結論

危険なのは「水準か速度か」の二者択一ではなかった。5%突破の後と、3か月で1.5%以上の急騰の後は、どちらも株が弱くなっている。

金利が上がれば株には逆風になる。投資の教科書にはそう書いてあります。しかし実際の市場では、金利が上がって株が下がる日もあれば、利上げが目前なのに株が上がる日もあります。金利と株の関係は、教科書ほど単純ではありません。

そこで、1962年以降の米国の10年債利回りと株価のデータを使い、2つの問いを検証しました。1つ目は、10年債利回りが5%を突破した後、株は本当に下がったのか。2つ目は、危険なのは5%という「水準」なのか、それとも金利が急騰する「速度」なのか、です。

この記事の結論

  1. 5%突破の7回の後は通常より弱い10年債利回りが下から5%を突破した7回の後、S&P500は通常より弱い成績でした。3か月後に上昇していたのは7回中2回、1年以内に10%以上下落したのは7回中4回です。
  2. 1%程度の急騰では崩れず、1.5%まで加速すると悪化一方、3か月で1%以上の金利急騰(20回)の後は、1年後に20回中16回が上昇し、中央値は+12.4%と、通常と変わらないかむしろ良い結果でした。ただし、3か月で1.5%以上まで加速した10回では、1年後の上昇は10回中5回、中央値は−2.5%に悪化しました。
  3. 水準か速度かの二者択一ではない「水準か速度か」という二者択一ではありませんでした。5%の突破と、1.5%までの加速、どちらの後も株は弱くなっています。
  4. NASDAQは上がる時も下がる時も大きいNASDAQは金利上昇の局面で、S&P500より上がる時も大きく、下がる時の傷も大きい結果でした。「金利上昇ならNASDAQを売る」という単純な答えにはなりません。
検証条件・計算方法を見る

セントルイス連銀が公開している10年債利回りの日次データ(1962年1月〜2026年9月10日)を使います。5%付近を行ったり来たりした日を重複して数えないように、直前60営業日がすべて5%未満で、その日に初めて終値で5%以上になった日を1回と数えます。

次に、5%とは無関係に、金利が急騰した局面だけを取り出します。条件は、10年債利回りが63営業日(約3か月)で1%以上上昇したことです。条件を満たす日が断続的に続いても、最後に条件を満たした日から60営業日空くまでは同じ局面とし、その局面の最初の日だけを起点にします。この条件で、1962年以降に20回ありました。

※S&P500の騰落率で、突破日の終値が起点です。3か月後は63営業日後、1年後は252営業日後。1年以内の最大下落は、突破日の終値からその後1年以内の最安値までです。

※1.5%以上の10回は、1%以上の20回と同じ局面を含みますが、それぞれの条件を初めて満たした日を起点にしているため、起点の日は同じとは限りません。

なぜ金利上昇は株に悪いと言われるのか

株価は、企業が将来生み出す利益を、金利などを反映した割引率で現在の価値に直して評価されます。金利が上がると割引率も上がりやすくなり、将来の利益の現在価値は下がります。その結果、PERに低下圧力がかかります。

特にNASDAQに多いグロース株は、利益の多くを遠い将来に期待されている銘柄です。遠い将来の利益ほど割引の影響を強く受けるため、理論上は金利上昇に最も弱いはずです。ただし、これは理論です。実際の市場がその通りに動いてきたかは、データで確かめる必要があります。

基本結果

長期では:金利が上がり続けた40年でもS&P500は14倍

表は横にスクロールできます

期間米国の長期金利S&P500(配当を含まない指数)
1941〜1981年(金利上昇の40年)2%前後 → 1981年9月30日に15.84%(1962年は4.06%、1979年に10%超え)1941年末 8.76 → 1981年末 122.55(約14倍)
1981〜2020年(金利低下の約40年)15.84% → 1%未満株のパフォーマンスははるかに良い

※S&P500は1957年に現在の形になったため、それ以前は前身の指数をつないだデータです。

金利が上がり続けた40年でも、株価そのものは上がっていました。ただし、その後の40年、金利が下がり続けた時代の方が株のパフォーマンスははるかに良く、直近の強い株高には金利低下という追い風がありました。長期では「金利が上がったから株を売る」という判断は、歴史のデータと合いません。では、時間軸を短くするとどうなるのか。ここからが検証です。

基本結果

検証1:10年債利回りが5%を突破した後の株価

セントルイス連銀が公開している10年債利回りの日次データ(1962年1月〜2026年9月10日)を使います。5%付近を行ったり来たりした日を重複して数えないように、直前60営業日がすべて5%未満で、その日に初めて終値で5%以上になった日を1回と数えます。

この条件で、1962年以降の5%突破は7回ありました。1968年から1998年までは1回もありません。この間は長く5%以上の状態が続き、次に5%を割ったのは1998年9月で、その後60営業日以上たった1999年2月の再突破が次の1回になります。また、2023年10月は「5%目前」と騒がれましたが、終値の最高は10月19日の4.98%で、5%には届いていません。

表は横にスクロールできます

5%突破の7回1962年以降のすべての日を起点(通常)
3か月後に上昇7回中2回(中央値−3.6%)3回に2回(中央値+2.6%)
1年後に上昇7回中4回(中央値+5.8%)4回に3回(中央値+10.5%)
1年以内に10%以上下落7回中4回3回に1回

表は横にスクロールできます

5%突破日3か月後1年後1年以内の最大下落
1966年2月28日−4.3%−4.9%−19.8%
1966年7月11日−16.3%+5.8%−16.3%
1967年6月14日+3.9%+8.2%−5.1%
1999年2月12日+8.8%+12.8%−0.5%
2001年11月23日−3.6%−19.1%−32.5%
2006年4月13日−4.1%+14.1%−5.1%
2007年6月7日−0.8%−8.7%−14.6%

※S&P500の騰落率で、突破日の終値が起点です。3か月後は63営業日後、1年後は252営業日後。1年以内の最大下落は、突破日の終値からその後1年以内の最安値までです。

10年債利回りが5%を突破した後、株は下がりやすかった。これが1つ目の問いの答えです。ただし、7回のうち3回は1966年から1967年に集中しており、サンプルは多くありません。だからこそ、次の検証が重要になります。

この検証の核心

検証2:金利が急騰した後の株価

次に、5%とは無関係に、金利が急騰した局面だけを取り出します。条件は、10年債利回りが63営業日(約3か月)で1%以上上昇したことです。条件を満たす日が断続的に続いても、最後に条件を満たした日から60営業日空くまでは同じ局面とし、その局面の最初の日だけを起点にします。この条件で、1962年以降に20回ありました。

表は横にスクロールできます

急騰の起点日
1970年5月25日1981年8月21日1988年5月23日2011年1月5日
1971年6月15日1982年2月9日1994年3月30日2013年7月5日
1979年10月9日1983年7月12日1996年4月18日2022年4月11日
1980年8月19日1984年4月16日2003年8月13日2022年10月12日
1987年4月13日2004年6月7日2023年10月17日

表は横にスクロールできます

1%以上の急騰 20回通常(すべての日を起点)
3か月後に上昇20回中13回(中央値+3.0%)3回に2回(中央値+2.6%)
1年後に上昇20回中16回(中央値+12.4%)4回に3回(中央値+10.5%)
1年以内に10%以上下落20回中5回3回に1回
1年以内に20%以上下落20回中2回(1981年8月・1987年4月)8回に1回

3か月で1%程度の金利急騰の後は、株は通常と変わらないか、むしろ良い結果でした。たとえば2023年10月17日(直前3か月で+1.03%)の1年後、S&P500は+33.6%でした。一方で、2022年4月11日の急騰の後は、3か月で−13.8%、6か月で−18.7%と大きく下げています。ただし、これは20回のうちの1回です。

3か月で1.5%以上まで加速すると、結果が変わる

さらに極端な急騰に絞り、3か月で1.5%以上の上昇(同じ重複除外の条件)を数えると、1962年以降で10回ありました。

表は横にスクロールできます

起点日1年後起点日1年後
1979年10月19日+29.4%1984年5月7日+15.0%
1980年8月28日+1.6%1987年5月15日−10.7%
1981年4月6日−14.3%1987年10月8日−13.3%
1981年8月24日−13.5%1994年5月6日+17.1%
1983年8月1日−6.6%2022年10月31日+9.4%

表は横にスクロールできます

1年後に上昇1年後の中央値1年以内に10%以上下落1年以内に20%以上下落
10回中5回−2.5%10回中4回10回中2回

※1.5%以上の10回は、1%以上の20回と同じ局面を含みますが、それぞれの条件を初めて満たした日を起点にしているため、起点の日は同じとは限りません。

1987年10月8日の急騰の直後にはブラックマンデーが起き、3か月で−22.5%、起点からの最大下落は−28.7%でした。3か月で1%程度の金利上昇では株は崩れていませんが、1.5%まで加速すると、成績ははっきり悪化しています。

2つ目の問いの答えは、「水準か速度か」という二者択一ではない、というものでした。3か月で1%程度の上昇だけでは株は通常と変わらず、一方で、5%の突破の後と、1.5%までの加速の後は、どちらも成績が弱くなっています。

追加検証 1

検証3:NASDAQは本当に金利上昇に弱いのか

NASDAQ総合指数のデータが始まる1971年以降で、同じ局面のNASDAQとS&P500を比べます。

5%突破の後(1971年以降の4回)

表は横にスクロールできます

突破日NASDAQ 1年後NASDAQ 最大下落S&P500 1年後S&P500 最大下落
1999年2月12日+89.3%−3.1%+12.8%−0.5%
2001年11月23日−22.8%−41.5%−19.1%−32.5%
2006年4月13日+8.2%−13.1%+14.1%−5.1%
2007年6月7日−2.6%−14.6%−8.7%−14.6%
1年以内に10%以上下落4回中3回4回中2回

※最大下落は、突破日の終値から1年以内の安値までです。

1999年2月の突破の後、NASDAQは1年で+89.3%でした。ITバブルの最終局面です。逆に2001年11月の突破の後は、1年以内に−41.5%まで下げています。5%突破の後のNASDAQは、振れ幅が極端でした。

3か月で1%以上の急騰の後(1971年以降の19回)

表は横にスクロールできます

NASDAQ総合S&P500
1年後に上昇19回中14回19回中15回
1年後の中央値+15.8%+11.7%
1年以内に10%以上下落19回中8回19回中5回
例:2022年4月11日の6か月後−22.3%−18.7%

この19回では、NASDAQはS&P500より、上がる時の伸びも大きく、下がる時の傷も大きい結果でした。金利が急騰した後にNASDAQを持っていてはいけない、という結果にはなっていません。

追加検証 2

2026年9月の位置

動画を作成した9月10日の時点で、10年債利回りは4.95%でした。63営業日前の6月10日(4.55%)からの上昇幅は0.40%、6月下旬の安値4.38%からでも0.57%で、「3か月で1%の急騰」には当たっていませんでした。速度は危険な部類に入っておらず、見るべきは5%を突破するかどうかでした。

金利サイクルの中の位置も、直近2回とは違っていました。

表は横にスクロールできます

局面10年債FRBの状態
2023年10月最高4.98%(10月19日)、5%には届かず2023年7月の利上げを最後に停止(利上げ終了後)
2007年6月6月7日に5%を突破据え置き → 3か月後の9月18日に利下げへ転換(サイクル終盤)
2026年9月9月10日に4.95%9月15〜16日のFOMCで利上げ再開が市場で85%織り込まれていた

その後(2026年9月15〜16日)

9月15日、10年債利回りは終値で5.00%となり、1962年以降で8回目の5%突破となりました。この時点の63営業日の上昇幅は0.53%(6月15日の4.47%から)で、速度の条件はまだ満たしていません。翌9月16日、FRBは0.25%の利上げを決め、2023年7月以来の利上げ再開となりました。

5%突破の後の金融政策の状態を過去7回と比べた検証 → 米10年債5%突破の翌日に利上げ。過去7回に同じ形はあったか?金融政策の状態で分類して検証

信用取引残高と5%が重なった過去2回の検証 → 信用取引残高と金利5%が重なると株は崩れる?過去の2000年・2007年と比べて検証

まとめ

1962年以降、10年債利回りが下から5%を突破した7回の後、3か月後に株が上昇していたのは2回だけで、1年以内に10%以上下落したのは4回でした。5%突破の後の株価は、通常より弱い結果です。

一方、3か月で1%程度の金利上昇は20回あり、その1年後は20回中16回が上昇、中央値も+12.4%でした。1%程度の金利急騰だけでは、株は崩れていません。ただし1.5%以上まで加速すると、1年後に上昇していたのは10回中5回、中央値は−2.5%まで悪化しました。

NASDAQは金利上昇の局面で、S&P500より上がる時も大きい一方、下がる時の傷も大きい結果でした。金利上昇ならNASDAQを売る、という単純な答えにはなりません。見るべきなのは、10年債が終値で5%を突破するかどうかと、金利上昇の速度がさらに加速するかどうかの2つです。

この検証の限界

この記事の数字を読むときは、次の点に注意してください。

  • 5%突破は7回だけで、そのうち3回は1966〜1967年に集中しています。
  • 3か月で1.5%以上の急騰10回のうち9回は1979〜1994年に集中しており、高インフレの時代の結果に大きく左右されています。
  • NASDAQ総合指数のデータは1971年からのため、5%突破の比較は4回だけです。
  • S&P500とNASDAQは配当を含まない指数で計算しています。
  • 統計的に弱い・強いという結果は、金利が原因で株価が動いたことを示すものではありません。
  • 本記事は過去データの検証であり、将来の値動きを保証するものではありません。また、特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。

新しい統計検証の公開を受け取る

この記事の内容をまとめた保存版PDFは、無料会員登録でダウンロードできます。

無料会員登録(無料)

この会員登録は、堀江投資塾の会員登録となります。登録すると、堀江投資塾からのさまざまなメールサービスや、無料動画の視聴サービスが受けられます。

最終更新:2026/10/10 | データの時点:検証は2026年9月10日まで。「その後」の囲みは9月15〜16日の動き