金利と株価親記事
金利上昇は株価にとって危険か?米10年債の「5%突破」と「金利急騰」を1962年以降のデータで検証
- 5%突破後、3か月後に上昇7回中2回1年以内に10%以上下落は7回中4回
- 3か月で1%以上の急騰後、1年後に上昇20回中16回中央値+12.4%
- 3か月で1.5%以上の急騰後、1年後に上昇10回中5回中央値−2.5%
- 1999年2月の5%突破後1年のNASDAQ+89.3%2001年11月の後は最大−41.5%
一言結論
危険なのは「水準か速度か」の二者択一ではなかった。5%突破の後と、3か月で1.5%以上の急騰の後は、どちらも株が弱くなっている。
金利が上がれば株には逆風になる。投資の教科書にはそう書いてあります。しかし実際の市場では、金利が上がって株が下がる日もあれば、利上げが目前なのに株が上がる日もあります。金利と株の関係は、教科書ほど単純ではありません。
そこで、1962年以降の米国の10年債利回りと株価のデータを使い、2つの問いを検証しました。1つ目は、10年債利回りが5%を突破した後、株は本当に下がったのか。2つ目は、危険なのは5%という「水準」なのか、それとも金利が急騰する「速度」なのか、です。
この記事の結論
- 5%突破の7回の後は通常より弱い10年債利回りが下から5%を突破した7回の後、S&P500は通常より弱い成績でした。3か月後に上昇していたのは7回中2回、1年以内に10%以上下落したのは7回中4回です。
- 1%程度の急騰では崩れず、1.5%まで加速すると悪化一方、3か月で1%以上の金利急騰(20回)の後は、1年後に20回中16回が上昇し、中央値は+12.4%と、通常と変わらないかむしろ良い結果でした。ただし、3か月で1.5%以上まで加速した10回では、1年後の上昇は10回中5回、中央値は−2.5%に悪化しました。
- 水準か速度かの二者択一ではない「水準か速度か」という二者択一ではありませんでした。5%の突破と、1.5%までの加速、どちらの後も株は弱くなっています。
- NASDAQは上がる時も下がる時も大きいNASDAQは金利上昇の局面で、S&P500より上がる時も大きく、下がる時の傷も大きい結果でした。「金利上昇ならNASDAQを売る」という単純な答えにはなりません。
この検証は動画でも解説しています:動画を見る 関連動画のリンク未設定
検証条件・計算方法を見る
セントルイス連銀が公開している10年債利回りの日次データ(1962年1月〜2026年9月10日)を使います。5%付近を行ったり来たりした日を重複して数えないように、直前60営業日がすべて5%未満で、その日に初めて終値で5%以上になった日を1回と数えます。
次に、5%とは無関係に、金利が急騰した局面だけを取り出します。条件は、10年債利回りが63営業日(約3か月)で1%以上上昇したことです。条件を満たす日が断続的に続いても、最後に条件を満たした日から60営業日空くまでは同じ局面とし、その局面の最初の日だけを起点にします。この条件で、1962年以降に20回ありました。
※S&P500の騰落率で、突破日の終値が起点です。3か月後は63営業日後、1年後は252営業日後。1年以内の最大下落は、突破日の終値からその後1年以内の最安値までです。
※1.5%以上の10回は、1%以上の20回と同じ局面を含みますが、それぞれの条件を初めて満たした日を起点にしているため、起点の日は同じとは限りません。
なぜ金利上昇は株に悪いと言われるのか
株価は、企業が将来生み出す利益を、金利などを反映した割引率で現在の価値に直して評価されます。金利が上がると割引率も上がりやすくなり、将来の利益の現在価値は下がります。その結果、PERに低下圧力がかかります。
特にNASDAQに多いグロース株は、利益の多くを遠い将来に期待されている銘柄です。遠い将来の利益ほど割引の影響を強く受けるため、理論上は金利上昇に最も弱いはずです。ただし、これは理論です。実際の市場がその通りに動いてきたかは、データで確かめる必要があります。
長期では:金利が上がり続けた40年でもS&P500は14倍
表は横にスクロールできます
| 期間 | 米国の長期金利 | S&P500(配当を含まない指数) |
|---|---|---|
| 1941〜1981年(金利上昇の40年) | 2%前後 → 1981年9月30日に15.84%(1962年は4.06%、1979年に10%超え) | 1941年末 8.76 → 1981年末 122.55(約14倍) |
| 1981〜2020年(金利低下の約40年) | 15.84% → 1%未満 | 株のパフォーマンスははるかに良い |
※S&P500は1957年に現在の形になったため、それ以前は前身の指数をつないだデータです。
金利が上がり続けた40年でも、株価そのものは上がっていました。ただし、その後の40年、金利が下がり続けた時代の方が株のパフォーマンスははるかに良く、直近の強い株高には金利低下という追い風がありました。長期では「金利が上がったから株を売る」という判断は、歴史のデータと合いません。では、時間軸を短くするとどうなるのか。ここからが検証です。
検証1:10年債利回りが5%を突破した後の株価
セントルイス連銀が公開している10年債利回りの日次データ(1962年1月〜2026年9月10日)を使います。5%付近を行ったり来たりした日を重複して数えないように、直前60営業日がすべて5%未満で、その日に初めて終値で5%以上になった日を1回と数えます。
この条件で、1962年以降の5%突破は7回ありました。1968年から1998年までは1回もありません。この間は長く5%以上の状態が続き、次に5%を割ったのは1998年9月で、その後60営業日以上たった1999年2月の再突破が次の1回になります。また、2023年10月は「5%目前」と騒がれましたが、終値の最高は10月19日の4.98%で、5%には届いていません。
表は横にスクロールできます
| 5%突破の7回 | 1962年以降のすべての日を起点(通常) | |
|---|---|---|
| 3か月後に上昇 | 7回中2回(中央値−3.6%) | 3回に2回(中央値+2.6%) |
| 1年後に上昇 | 7回中4回(中央値+5.8%) | 4回に3回(中央値+10.5%) |
| 1年以内に10%以上下落 | 7回中4回 | 3回に1回 |
表は横にスクロールできます
| 5%突破日 | 3か月後 | 1年後 | 1年以内の最大下落 |
|---|---|---|---|
| 1966年2月28日 | −4.3% | −4.9% | −19.8% |
| 1966年7月11日 | −16.3% | +5.8% | −16.3% |
| 1967年6月14日 | +3.9% | +8.2% | −5.1% |
| 1999年2月12日 | +8.8% | +12.8% | −0.5% |
| 2001年11月23日 | −3.6% | −19.1% | −32.5% |
| 2006年4月13日 | −4.1% | +14.1% | −5.1% |
| 2007年6月7日 | −0.8% | −8.7% | −14.6% |
※S&P500の騰落率で、突破日の終値が起点です。3か月後は63営業日後、1年後は252営業日後。1年以内の最大下落は、突破日の終値からその後1年以内の最安値までです。
10年債利回りが5%を突破した後、株は下がりやすかった。これが1つ目の問いの答えです。ただし、7回のうち3回は1966年から1967年に集中しており、サンプルは多くありません。だからこそ、次の検証が重要になります。
検証2:金利が急騰した後の株価
次に、5%とは無関係に、金利が急騰した局面だけを取り出します。条件は、10年債利回りが63営業日(約3か月)で1%以上上昇したことです。条件を満たす日が断続的に続いても、最後に条件を満たした日から60営業日空くまでは同じ局面とし、その局面の最初の日だけを起点にします。この条件で、1962年以降に20回ありました。
表は横にスクロールできます
| 急騰の起点日 | |||
|---|---|---|---|
| 1970年5月25日 | 1981年8月21日 | 1988年5月23日 | 2011年1月5日 |
| 1971年6月15日 | 1982年2月9日 | 1994年3月30日 | 2013年7月5日 |
| 1979年10月9日 | 1983年7月12日 | 1996年4月18日 | 2022年4月11日 |
| 1980年8月19日 | 1984年4月16日 | 2003年8月13日 | 2022年10月12日 |
| 1987年4月13日 | 2004年6月7日 | 2023年10月17日 |
表は横にスクロールできます
| 1%以上の急騰 20回 | 通常(すべての日を起点) | |
|---|---|---|
| 3か月後に上昇 | 20回中13回(中央値+3.0%) | 3回に2回(中央値+2.6%) |
| 1年後に上昇 | 20回中16回(中央値+12.4%) | 4回に3回(中央値+10.5%) |
| 1年以内に10%以上下落 | 20回中5回 | 3回に1回 |
| 1年以内に20%以上下落 | 20回中2回(1981年8月・1987年4月) | 8回に1回 |
3か月で1%程度の金利急騰の後は、株は通常と変わらないか、むしろ良い結果でした。たとえば2023年10月17日(直前3か月で+1.03%)の1年後、S&P500は+33.6%でした。一方で、2022年4月11日の急騰の後は、3か月で−13.8%、6か月で−18.7%と大きく下げています。ただし、これは20回のうちの1回です。
3か月で1.5%以上まで加速すると、結果が変わる
さらに極端な急騰に絞り、3か月で1.5%以上の上昇(同じ重複除外の条件)を数えると、1962年以降で10回ありました。
表は横にスクロールできます
| 起点日 | 1年後 | 起点日 | 1年後 |
|---|---|---|---|
| 1979年10月19日 | +29.4% | 1984年5月7日 | +15.0% |
| 1980年8月28日 | +1.6% | 1987年5月15日 | −10.7% |
| 1981年4月6日 | −14.3% | 1987年10月8日 | −13.3% |
| 1981年8月24日 | −13.5% | 1994年5月6日 | +17.1% |
| 1983年8月1日 | −6.6% | 2022年10月31日 | +9.4% |
表は横にスクロールできます
| 1年後に上昇 | 1年後の中央値 | 1年以内に10%以上下落 | 1年以内に20%以上下落 |
|---|---|---|---|
| 10回中5回 | −2.5% | 10回中4回 | 10回中2回 |
※1.5%以上の10回は、1%以上の20回と同じ局面を含みますが、それぞれの条件を初めて満たした日を起点にしているため、起点の日は同じとは限りません。
1987年10月8日の急騰の直後にはブラックマンデーが起き、3か月で−22.5%、起点からの最大下落は−28.7%でした。3か月で1%程度の金利上昇では株は崩れていませんが、1.5%まで加速すると、成績ははっきり悪化しています。
2つ目の問いの答えは、「水準か速度か」という二者択一ではない、というものでした。3か月で1%程度の上昇だけでは株は通常と変わらず、一方で、5%の突破の後と、1.5%までの加速の後は、どちらも成績が弱くなっています。
検証3:NASDAQは本当に金利上昇に弱いのか
NASDAQ総合指数のデータが始まる1971年以降で、同じ局面のNASDAQとS&P500を比べます。
5%突破の後(1971年以降の4回)
表は横にスクロールできます
| 突破日 | NASDAQ 1年後 | NASDAQ 最大下落 | S&P500 1年後 | S&P500 最大下落 |
|---|---|---|---|---|
| 1999年2月12日 | +89.3% | −3.1% | +12.8% | −0.5% |
| 2001年11月23日 | −22.8% | −41.5% | −19.1% | −32.5% |
| 2006年4月13日 | +8.2% | −13.1% | +14.1% | −5.1% |
| 2007年6月7日 | −2.6% | −14.6% | −8.7% | −14.6% |
| 1年以内に10%以上下落 | 4回中3回 | 4回中2回 |
※最大下落は、突破日の終値から1年以内の安値までです。
1999年2月の突破の後、NASDAQは1年で+89.3%でした。ITバブルの最終局面です。逆に2001年11月の突破の後は、1年以内に−41.5%まで下げています。5%突破の後のNASDAQは、振れ幅が極端でした。
3か月で1%以上の急騰の後(1971年以降の19回)
表は横にスクロールできます
| NASDAQ総合 | S&P500 | |
|---|---|---|
| 1年後に上昇 | 19回中14回 | 19回中15回 |
| 1年後の中央値 | +15.8% | +11.7% |
| 1年以内に10%以上下落 | 19回中8回 | 19回中5回 |
| 例:2022年4月11日の6か月後 | −22.3% | −18.7% |
この19回では、NASDAQはS&P500より、上がる時の伸びも大きく、下がる時の傷も大きい結果でした。金利が急騰した後にNASDAQを持っていてはいけない、という結果にはなっていません。
2026年9月の位置
動画を作成した9月10日の時点で、10年債利回りは4.95%でした。63営業日前の6月10日(4.55%)からの上昇幅は0.40%、6月下旬の安値4.38%からでも0.57%で、「3か月で1%の急騰」には当たっていませんでした。速度は危険な部類に入っておらず、見るべきは5%を突破するかどうかでした。
金利サイクルの中の位置も、直近2回とは違っていました。
表は横にスクロールできます
| 局面 | 10年債 | FRBの状態 |
|---|---|---|
| 2023年10月 | 最高4.98%(10月19日)、5%には届かず | 2023年7月の利上げを最後に停止(利上げ終了後) |
| 2007年6月 | 6月7日に5%を突破 | 据え置き → 3か月後の9月18日に利下げへ転換(サイクル終盤) |
| 2026年9月 | 9月10日に4.95% | 9月15〜16日のFOMCで利上げ再開が市場で85%織り込まれていた |
その後(2026年9月15〜16日)
9月15日、10年債利回りは終値で5.00%となり、1962年以降で8回目の5%突破となりました。この時点の63営業日の上昇幅は0.53%(6月15日の4.47%から)で、速度の条件はまだ満たしていません。翌9月16日、FRBは0.25%の利上げを決め、2023年7月以来の利上げ再開となりました。
5%突破の後の金融政策の状態を過去7回と比べた検証 → 米10年債5%突破の翌日に利上げ。過去7回に同じ形はあったか?金融政策の状態で分類して検証
信用取引残高と5%が重なった過去2回の検証 → 信用取引残高と金利5%が重なると株は崩れる?過去の2000年・2007年と比べて検証
まとめ
1962年以降、10年債利回りが下から5%を突破した7回の後、3か月後に株が上昇していたのは2回だけで、1年以内に10%以上下落したのは4回でした。5%突破の後の株価は、通常より弱い結果です。
一方、3か月で1%程度の金利上昇は20回あり、その1年後は20回中16回が上昇、中央値も+12.4%でした。1%程度の金利急騰だけでは、株は崩れていません。ただし1.5%以上まで加速すると、1年後に上昇していたのは10回中5回、中央値は−2.5%まで悪化しました。
NASDAQは金利上昇の局面で、S&P500より上がる時も大きい一方、下がる時の傷も大きい結果でした。金利上昇ならNASDAQを売る、という単純な答えにはなりません。見るべきなのは、10年債が終値で5%を突破するかどうかと、金利上昇の速度がさらに加速するかどうかの2つです。
この検証の限界
この記事の数字を読むときは、次の点に注意してください。
- 5%突破は7回だけで、そのうち3回は1966〜1967年に集中しています。
- 3か月で1.5%以上の急騰10回のうち9回は1979〜1994年に集中しており、高インフレの時代の結果に大きく左右されています。
- NASDAQ総合指数のデータは1971年からのため、5%突破の比較は4回だけです。
- S&P500とNASDAQは配当を含まない指数で計算しています。
- 統計的に弱い・強いという結果は、金利が原因で株価が動いたことを示すものではありません。
- 本記事は過去データの検証であり、将来の値動きを保証するものではありません。また、特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。
新しい統計検証の公開を受け取る
この記事の内容をまとめた保存版PDFは、無料会員登録でダウンロードできます。
無料会員登録(無料)この会員登録は、堀江投資塾の会員登録となります。登録すると、堀江投資塾からのさまざまなメールサービスや、無料動画の視聴サービスが受けられます。
最終更新:2026/10/10 | データの時点:検証は2026年9月10日まで。「その後」の囲みは9月15〜16日の動き
