金価格の反発は本物か?過去20年の「本当の底」と実質金利の関係で検証
- 最高値からの下落率(取引時間中)約29.6%終値では約26.6%
- 過去4回の本当の底と実質金利ピークの差最大38日
- 反発が続かなかった2013年70日安値→実質金利のピーク
- 米国10年実質金利(9月24日)2.85%2008年11月以来。ピーク未確認
一言結論
金は3割近く下げた後に反発したが、過去の本当の底のように実質金利がピークを付けておらず、反発が続かなかった2013年と同じ形。底打ちの可能性はあるが、本格的な上昇はまだ確認できない。
金価格は1月の最高値から約3割下落しました。その後、一時は約2割反発しましたが、9月に入ってその反発分の半分以上を失っています。これは絶好の買い場なのでしょうか。それとも、まだ下落相場の途中なのでしょうか。
金にとって重要な米国の実質金利は2.85%まで上昇し、約18年ぶりの高水準です。そこで、過去に金が大きく下落した局面で、金が最終的な底を付けた時に実質金利がどう動いていたかを調べ、今回の反発が過去のどの形に近いかを確認しました。
この記事の結論
- 下落率だけでは底と判断できない3割近い下落は過去の中央値並みですが、平均は36%で、下落率だけでは底と判断できません。
- 本当の底では実質金利のピークとの差が最大38日2003年以降に金が20%以上下落した4回の「本当の底」では、金の底と実質金利のピークの差は最大でも38日でした。
- 今回は70日たってもピーク未確認反発が続かなかった2013年は、安値から実質金利のピークまで70日かかりました。今回も、安値から70日たった9月24日に実質金利が今年の最高値を更新しており、ピークを確認できていません。
- 本格的な上昇はまだ確認できない現時点では、底打ちの可能性はありますが、本格的な上昇はまだ確認できません。
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比べる局面は、ルールを決めて選びました。実質金利のデータがある2003年以降で、金が2003年以降のそれまでの最高値から20%以上下落した局面は、今回を除いて4回あります。金の価格は終値でそろえています。
※表の「実質金利のピーク」は、いずれも金の底の前後75日間で、実質金利が最も高かった日です。
今回の下落と反発(2026年)
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| 項目 | 取引時間中の値段 | 終値 |
|---|---|---|
| 最高値 | 5,602ドル(1月29日) | 5,418.55ドル(1月28日) |
| 安値 | 3,942ドル(6月30日) | 3,976.58ドル(7月16日) |
| 最高値からの下落率 | 約29.6% | 約26.6% |
取引時間中の値段で見ると、金は6月30日の安値3,942ドルから8月25日の高値4,697ドルまで約2割反発しました。しかし9月25日の終値は4,284.97ドルで、この反発分の約55%を失っています。
一方、米国の10年実質金利は9月24日に2.85%まで上がり、2008年11月以来、約18年ぶりの高さになりました。
※金価格は、使うデータによって数ドル程度異なる場合があります。
下落率だけでは底と判断できない
金の業界団体であるワールド・ゴールド・カウンシルの集計によると、1971年以降、金が最高値から20%を超えて下落した場面は8回ありました。その下落率は平均で36%、中央値で29%です。なお、この集計には今回の下落は含まれていません。
| 比較 | 下落率 |
|---|---|
| 過去8回(1971年以降)の平均 | 36% |
| 過去8回(1971年以降)の中央値 | 29% |
| 今回(取引時間中の高値・安値) | 29.6% |
| 今回(終値) | 26.6% |
今回は過去の中央値に近い水準まで下がっていますが、平均は36%です。3割近く下がったというだけで、底だと判断することはできません。価格の水準とは別の物差しが必要です。
実質金利とは何か、なぜ金に影響するのか
実質金利とは、金利から物価の上昇分を差し引いた、実質的な金利のことです。この記事では、米国の10年物価連動国債の利回りを実質金利として使います。
金は利息を生みません。そのため、実質金利が上がるほど、金を持つことで受け取れなくなる利息が大きくなり、一般に金には逆風になります。反対に、実質金利が下がると、金には追い風になります。
今年の夏の動き:実質金利の上昇が止まった8月に金は最も強かった
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| 月 | 実質金利 | 金(終値) |
|---|---|---|
| 7月 | 2.20%→2.47%(上昇) | +0.9%(ほぼ横ばい) |
| 8月 | 2.47%→2.44%(上昇が止まる) | +10.0%(最も強い) |
| 9月 | 2.44%→2.85%(急上昇) | −3.7%(9月25日まで) |
※月末の値で比較。9月は実質金利が9月24日、金が9月25日までの値です。
7月は実質金利が上がり、金はほぼ横ばいでした。実質金利の上昇が止まった8月に金は最も強く、実質金利が急上昇した9月には下落しました。
過去4回の「本当の底」と実質金利
比べる局面は、ルールを決めて選びました。実質金利のデータがある2003年以降で、金が2003年以降のそれまでの最高値から20%以上下落した局面は、今回を除いて4回あります。金の価格は終値でそろえています。
※2006年の高値は、1980年1月の最高値(850ドル)を下回っており、史上最高値ではありません。
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| 局面 | 金の底(終値) | 実質金利のピーク | 底とピークの間隔 |
|---|---|---|---|
| 2006年 | 6月14日(約560ドル) | 6月28日(2.68%) | 底の14日後にピーク |
| 2008年 | 11月12日(約712ドル) | 11月21日(3.15%) | 底の9日後にピーク |
| 2011〜2015年 | 2015年12月17日(約1,052ドル) | 12月16日(0.84%) | ピークの翌日に底 |
| 2020〜2022年 | 2022年9月26日(約1,623ドル) | 11月3日(1.74%) | 底の38日後にピーク |
4回とも、金が本当の底を付けた前後で、実質金利も一度ピークを付けていました。金の底との差は、一番離れていた2022年でも38日でした。しかも、4回中3回(2006年、2008年、2022年)は、金の方が実質金利のピークより先に底を打っています。残る2015年も、実質金利がピークを付けた翌日に金が底を付けました。
さらに2006年は、約1年後の2007年6月に実質金利が2.83%まで上がり、金が底を付けた日の2.5%を上回りましたが、金は底を割りませんでした。実質金利が上がっているから金は絶対に上がらない、というわけではありません。
※表の「実質金利のピーク」は、いずれも金の底の前後75日間で、実質金利が最も高かった日です。
※2008年は、金融危機で物価連動国債の流動性プレミアムが拡大した時期です。
2022年の例
2022年は、金が9月26日に終値で約1,623ドルの底を付けた後、10月20日(約1,628ドル)と11月3日(約1,630ドル)にも、ほぼ同じ水準まで下げました。そして11月3日に、実質金利は1.74%でピークを付けています。金が底を付けてから38日後のことです。
その後、12月2日には実質金利が1.08%まで下がり、その日の金は約1,798ドルと、底から約11%上の水準まで戻っています。
18%反発しても底ではなかった2013年
一方で、過去には、18%も反発したのに、そこが底ではなかった場面もあります。それが2013年です。当時の金は、2011年の最高値から下落が続いていました。
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| 日付 | 金(終値) | 実質金利 | 出来事 |
|---|---|---|---|
| 2013年6月27日 | 約1,201ドル | 0.50% | 安値。最高値から約37%下落 |
| 2013年8月28日 | 約1,417ドル | 0.63% | 安値から18.1%反発 |
| 2013年9月5日 | 約1,368ドル | 0.92% | 実質金利のピーク(安値から70日後) |
| 2013年12月19日 | 約1,189ドル | 0.79% | 6月の安値を下回る |
| 2015年12月17日 | 約1,052ドル | 0.77% | 本当の底(実質金利ピークの翌日) |
金は6月27日の安値から8月28日までに18.1%反発しましたが、8月28日の実質金利は0.63%と、安値の日の0.50%より高くなっていました。そして、安値の前後75日間で実質金利が最も高かったのは、安値から70日後の9月5日(0.92%)でした。本当の底だった4回は、一番離れていた2022年でも38日でしたから、その倍近い長さです。結果として反発は続かず、12月19日には6月の安値を下回りました。
この下落局面の本当の底は、2015年12月17日の約1,052ドルでした。この時は、実質金利がピークを付けた翌日に金が底を付けています。
今回はどちらに近いか
| 局面 | 金の安値から実質金利のピークまで |
|---|---|
| 2006年(本当の底) | 14日後 |
| 2008年(本当の底) | 9日後 |
| 2015年(本当の底) | 1日前 |
| 2022年(本当の底) | 38日後 |
| 2013年(途中の安値) | 70日後 |
| 2026年(今回) | 70日経過・9月24日時点でピーク未確認 |
終値で見ると、今回の安値は7月16日の約3,977ドルです。取引時間中の最安値は6月30日ですが、終値で一番安かったのは7月16日でした。7月16日に2.35%だった実質金利は、70日後の9月24日には2.85%まで上がり、今年の最高値を更新しています。6月30日の安値を起点にすると、86日たってもピークを付けていないことになります。
前後75日間の最高値という同じ見方をすると、9月24日の2.85%は7月16日以降で最も高い値ですが、その後の動きを見るまでは、これがピークだったかどうかは判断できません。
本当の底だった4回では、金の底と実質金利のピークの差は、最大でも38日でした。2013年は、実質金利のピークまで70日かかりました。そして今回は、70日たっても、実質金利はまだピークを付けていません。
堀江が確認する2つの条件
反発が本物かどうかを判断するために、堀江は次の2つを確認します。
条件1:実質金利のピークアウト
9月24日に2.85%と今年の最高値を更新しており、ピークはまだ付いていません。
条件2:レジスタンスラインの明確な突破
| 水準(週足) | 意味 |
|---|---|
| 8月24日の週の高値 4,697.105ドル | これを超える上昇で、上昇トレンドの継続を確認 |
| 4月13日の週の高値 4,891.540ドル | 下落トレンドが終了する水準 |
8月17日の週の上抜けは、4月13日の週の高値を超えられずに押し戻されたため、明確な突破ではありません。また、4,697ドルから4,891ドルの間では、「上昇トレンドの継続」と「下落トレンドの終了前」が同時に成り立つため、どの期間のトレンドを見ているかに注意が必要です。
※価格の水準は、使うチャートのデータによって数ドル程度異なる場合があります。
まとめ
金は最高値から約3割下落し、安値からは反発しています。過去20年を見ると、金は実質金利がピークを付ける前に底を打つこともありました。実質金利が上がっているから金は絶対に上がらない、という考え方は間違いです。
ただし今回は、実質金利が2.85%まで上昇し、週足でも下降トレンドラインをまだ明確には突破していません。現時点では、底打ちの可能性はありますが、本格的な上昇はまだ確認できません。確認すべきなのは、実質金利のピークアウトと、下降トレンドラインの明確な突破の2つです。
この検証の限界
この記事の数字を読むときは、次の点に注意してください。
- 比較した「本当の底」は4回、例外の2013年は1回で、事例の数は多くありません。
- 本当の底では、金の底と実質金利のピークの差が最大38日でしたが、差が小さければ必ず底になるということまでは、今回の検証では確かめていません。また、ある安値が「本当の底」だったかどうかは、その後の値動きを見て初めて分かります。
- 「実質金利のピーク」は、金の底の前後75日間の最高値として確認しています。期間の取り方を変えると、ピークの日付が変わる場合があります。たとえば前後60日間にすると、2013年のピークは8月22日の0.79%(安値から56日後)になります。
- 日数はカレンダー上の日数です。
- 2008年は、金融危機で物価連動国債の流動性プレミアムが拡大した時期で、実質金利の動きに特殊な要因が含まれます。
- ワールド・ゴールド・カウンシルの過去8回の集計は、この記事の計算と価格データや集計方法が同じとは限りません。
- 本記事は過去データの検証であり、将来の値動きを保証するものではありません。また、特定の商品の売買を推奨するものではありません。
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最終更新:2026/10/10 | データの時点:金価格は2026年9月25日、実質金利は2026年9月24日まで
