
メモリー株は「これだけ下がったから買い」で良いのか?大底と赤字決算の関係を過去データで検証
- 期待先行型の高値9例:2年以内の最大下落すべて36%超36.6%〜82.1%
- 直近12か月の赤字を確認後に買った場合の2年後平均+164%24回中19回がプラス
- キオクシアの最大下落(2026年6月の高値から)−64.7%9例と並べると深い側から4番目
- マイクロンの赤字サイクルの大底4回とも利益が最も悪化した局面か、その少し前
一言結論
メモリー株の大底は、株価の下落率ではなく利益サイクルの悪化と重なっていた。赤字の確認は遅れたシグナルだが、確認してから買っても2年後の平均は+164%だった(生き残った会社のみの数字)。
メモリー株が大きく下がると、「これだけ下がったのだから、もう安いだろう」と考えたくなります。では、過去のメモリー株は、どこで天井を付け、どこで大底を付けてきたのでしょうか。マイクロン、SKハイニックス、サムスン電子の過去の株価と利益のデータを使って検証し、2026年に大きく下げたキオクシアにも当てはめました。
この記事の結論
- 期待先行型の高値9例は全例36%超の下落利益に対して株価が大きく先行した「期待先行型」の高値9例では、高値から2年以内の最大下落が、すべて36%を超えていました(36.6%〜82.1%)。
- 大底は利益が最も悪化した局面か、その少し前マイクロンの過去4回の大底は、利益が最も悪化した局面か、その少し前に付いていました。赤字の確認は、底を当てる道具ではなく、底を過ぎたか、底が近いことを示す遅れたシグナルです。
- 赤字確認後に買っても2年後平均+164%それでも、直近12か月の実績が赤字になったことを確認してから買った場合、24回の観測で2年後の平均はプラス164%、24回中19回がプラスでした(ただし、生き残った会社だけの数字です)。
- 下落率ではなく利益サイクルを見るメモリー株の大底を考えるなら、株価が何%下がったかではなく、利益サイクルがどこまで悪化したかを見る必要があります。
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| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象 | マイクロン、SKハイニックス、サムスン電子(キオクシアは参考) |
| 株価 | 日足の終値(株式分割を調整済み、配当は含まない)。マイクロンは1984年以降 |
| 利益 | 各社の一次資料に基づく1株利益(EPS) |
| PERの基準 | 実績PERで比較。マイクロンは直近12か月(TTM)、SKハイニックスとサムスン電子は前年通期の利益を使用 |
今回の下落は「期待先行型」の天井から始まった
まず、過去のメモリー株の主要な高値を調べ、その中で、実績PERが20倍を超えていたか、赤字のまま付けた高値を「期待先行型」と呼ぶことにしました。利益に対して、株価が大きく先回りしていた高値です。2026年6月の高値は、3社ともこの期待先行型に当たります。
表は横にスクロールできます
| 2026年6月の高値時点 | 実績PER | 利益の基準 |
|---|---|---|
| マイクロン | 約27.5倍 | 直近12か月の実績利益 |
| SKハイニックス | 約48倍 | 前年通期の実績利益 |
| サムスン電子 | 約54倍 | 前年通期の実績利益 |
今回の下落は、「業績が絶好調なのにPERが低く、割安に見えるところから崩れた」というタイプではありません。将来の利益成長をかなり先まで織り込んだ水準から、下落が始まりました。
期待先行型の9例:高値から2年以内にどこまで下げたか
過去に期待先行型に分類された主要な高値は、会社別に9例ありました。それぞれの高値から2年以内の最大下落率は、次の通りです。
| 期待先行型の高値(会社別9例) | 高値から2年以内の最大下落率 |
|---|---|
| 浅い順に1〜3例目 | 36.6%、42.2%、43.2% |
| 4〜6例目 | 48.9%、49.5%、57.8% |
| 7〜9例目 | 64.8%、81.7%、82.1% |
※9例は、独立した9回のメモリーサイクルではありません。同じ相場局面で複数の会社が高値を付けたケースを含みます。
9例とも、高値から2年以内に36%を超えて下落していました。
キオクシアの下落を、この9例に並べると
キオクシアは、2026年6月22日の終値ベースの高値10万8,700円から、7月29日の3万8,380円まで下落しました。最大下落率は64.7%です。これを9例の分布に置くと、深い側から4番目(82.1%・81.7%・64.8%の次)に相当します。キオクシアは、過去のメモリー株の大きな下落と比べても、すでにかなり深いところまで来ていました。
ただし、過去には81.7%、82.1%まで下落したケースもあります。10万8,700円から82%下落すると約1万9,600円で、3万8,380円からさらにほぼ半値です。64%下がったから、もう底だとは言えません。
メモリー株の大底は「安くなったところ」ではなかった
では、大底はどこで付いたのか。マイクロンで、直近12か月の実績利益が赤字に転落するほど悪化したサイクルは、過去に4回ありました。その4回の株価の底(終値)を、日付まで調べました。
表は横にスクロールできます
| 赤字のサイクル | 株価の底(終値) | 赤字との位置関係 |
|---|---|---|
| 2008年前後 | 2008年11月20日 | 赤字の期間の中 |
| 2011〜2013年 | 2011年10月3日 | 赤字の四半期の中(赤字の発表より前) |
| 2016年 | 2016年5月13日 | 赤字に転落する1四半期前 |
| 2023〜2024年 | 2022年9月26日 | 赤字に転落する2四半期以上前 |
底は、赤字の真っただ中で付いたこともあれば、赤字が発表される前に、すでに付いていたこともありました。赤字の確認で、底そのものをピンポイントで当てることはできません。
それでも、4回の底はすべて、利益が最も悪化する局面の前後に集まっていました。メモリー半導体は典型的なサイクル産業です。需要が強まり、価格が上がり、利益が増え、増産で供給が増え、価格が下がり、利益が減って赤字になる。この循環を繰り返してきました。誰もメモリー株を買いたくない、メモリー価格も下がっている、会社も赤字。ここまで来ると、サイクルは最終盤です。赤字の確認が教えてくれるのは、底の場所ではなく、「サイクルの悪化がほぼ出尽くした」ということでした。
赤字を確認してから買うと、どうなったか
赤字を確認してから買うと、必ず底より遅れます。遅れて買って間に合うのかを、マイクロンで検証しました。条件は、直近12か月(TTM)の実績利益が赤字に転落したことが決算で発表され、投資家が確認できた後に、その次の四半期末に買うことです。
| マイクロン:TTM赤字の確認後に買った場合 | 結果 |
|---|---|
| 観測した回数(四半期末) | 24回 |
| 2年後のリターンの平均 | +164% |
| 2年後のリターンの中央値 | +99.7% |
| 2年後にプラスだった回数 | 24回中19回 |
| 最も悪かった回 | −35.6% |
決算発表を待ってから買っても、この成績でした。過去のマイクロンでは、赤字転落を確認した後にも、大きなリターンを取れる局面が何度もありました。
SKハイニックスでも確認しました。前年通期が赤字だったことが決算で判明した後の12の月次観測点では、1年後の株価が12回すべてプラスでした。
ただし、この成績は生き残った会社だけの数字です。エルピーダやキマンダのように、赤字の先で消滅した会社は、統計に入れようがありません。赤字はチャンスであると同時に、会社が本当に消えるリスクと隣り合わせの局面でもあります。その前提の数字です。
2026年8月時点の位置:利益はまだ急増していた
マイクロンの直近の四半期ごとの1株利益は、4.60ドル、12.07ドル、24.67ドルと増え、会社が示した次の四半期の見通しは30.73ドル前後でした。
利益は赤字どころか、まだ急増していました。過去の大底では、利益が崩れ、赤字になり、市場から悲観され、その後に次のサイクルが始まりました。今回は逆で、利益はまだ非常に高いのに、株価が先に崩れ始めています。株価が業績の悪化を先取りしている可能性を考える必要があります。
見るべきなのは、利益の水準ではなく変化です。30ドル台の利益がさらに伸びるのか、伸びが止まるのか、減少へ向かうのか。メモリー株は、利益の伸びがピークを付ける前に、株価が先にピークを付けることがあります。
キオクシアは、主要メモリー株と同じように動くか
キオクシアは2024年12月に上場したばかりで、長期の株価データがありません。そこで、上場後のキオクシアと、マイクロン、SKハイニックス、サムスン電子の3社平均の週次リターンを比べました。
| キオクシアと3社平均(週次リターン) | 値 |
|---|---|
| 相関係数 | 約0.65 |
| ベータ値(3社平均に対して) | 約1.28 |
キオクシアは3社とかなり同じ方向に動き、3社が動いたときには、平均的にそれより大きく動く傾向が出ています。ただし、上場から約1年8か月で、1つの相場局面しか見ていない数字です。それでも、キオクシアだけを独立した銘柄として見るより、世界の主要メモリー株の動きを合わせて見る必要があることは分かります。3社まで同時に崩れているなら、それはキオクシア固有の問題ではなく、メモリー株に共通する調整である可能性を考える必要があります。
堀江の買い方:大底を狙うか、中間反発を狙うか
堀江は、メモリー株の買い方を2つに分けて考えています。
表は横にスクロールできます
| 大底を狙う | 中間反発を狙う | |
|---|---|---|
| 見るもの | 利益サイクル | チャートの底打ちの形 |
| 買いの合図 | 直近12か月の実績の赤字転落を確認した後 | 安値を付け、反発し、もう一度売られても最初の安値を割らず、戻り高値を上抜いたところ |
| 弱点 | 底より遅れる。その前に大きな反発が起きることがある | 大底そのものは取れない |
同じ銘柄を買うにしても、2つの買い方では買う理由がまったく違います。大底を狙うなら利益サイクル、中間反発を狙うならチャート。この2つを混ぜないことが大切だ、というのが堀江の考え方です。
まとめ
メモリー株では、「これだけ下がったから安い」という判断は危険です。期待先行型の高値9例は、すべて高値から2年以内に36%を超えて下落し、81〜82%まで下げた例もありました。
マイクロンの過去4回の大底は、利益が最も悪化した局面か、その少し前に付いていました。赤字の確認は底を当てる道具ではありませんが、直近12か月の実績の赤字を確認してから買っても、24回の観測で2年後の平均はプラス164%でした。メモリー株の大底を判断するなら、株価の下落率だけでなく、利益サイクルがどこまで悪化したかを見る必要があります。
この検証の限界
この記事の数字を読むときは、次の点に注意してください。
- 期待先行型の9例は、同じ相場局面で複数の会社が付けた高値を含み、独立した9回のサイクルではありません。
- 赤字確認後の24回の観測は四半期ごとで、2年後までの期間が互いに重なっています。24回は独立した試行ではありません。
- 生き残った会社だけの成績です。赤字の先で消滅した会社は含まれていません。
- マイクロンには、赤字を伴わずに付けた大底もありました(2018年12月)。利益サイクルだけですべての底を説明できるわけではありません。
- キオクシアの相関とベータは、上場後の約1年8か月、1つの相場局面だけの数字です。
- 株価は配当を含まない終値で計算しています。
- 本記事は過去データの検証であり、将来の値動きを保証するものではありません。また、特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。
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PDFライブラリを見る公開日:2026/10/06 | データの時点:株価は2026年8月7日まで(キオクシアの最大下落は7月29日の安値まで)
