
半導体株(SOX指数)が1日5%以上急落した後、株価はどうなった?1995年以降180回のデータで検証
- 1日5%以上の急落(1995年以降)180回
- 急落の3か月後に上昇していた割合67.8%ふつうの日は64.0%
- 1か月に3回以上の集中下落の1年後17回中8回が上昇−55%〜+190%
- 1日8%以上の急落で2年後もマイナス21回中10回すべて2000〜2001年
一言結論
急落の1〜3か月後はふつうの日をやや上回る程度。集中下落の1年後は大底と暴落の序章に大きく分かれ、2年後もマイナスだった8%超の急落はすべてITバブル崩壊期だった。
半導体株が1日で大きく急落すると、「押し目買いのチャンスか」「AIバブル崩壊の始まりか」と意見が割れます。では、過去に半導体株が急落した後、相場は実際にどう動いたのでしょうか。米国の半導体株指数であるSOX指数の、1995年以降のすべての日次データを使って検証しました。
この記事の結論
- 5%超の急落後はふつうの日をやや上回る程度1995年以降、SOX指数が1日で5%以上下落した日は180回ありました。その後に上昇していた割合は、1か月後が64.4%(中央値+4.0%)、3か月後が67.8%(中央値+8.4%)で、ふつうの日(58.7%、64.0%)よりやや高めでした。1週間後は52.8%で、ふつうの日(54.8%)と大差ありません。
- 集中下落の半年後・1年後は半分を下回る約1か月の間に5%超の急落が3回以上集中した「集中下落」は、過去17回ありました。3か月後は17回中12回が上昇していましたが、半年後と1年後は17回中8回と半分を下回り、1年後の騰落率は−55%から+190%まで分かれました。
- 大底と暴落の序章が混在集中下落は、後から見れば大底だったこと(2020年3月、2025年4月)もあれば、暴落の序章だったこと(2000年4月、2000年7月)もありました。1日8%以上の急落で2年後もマイナスだった回は、すべて2000〜2001年に集中しており、SOX指数の過熱度と米国株全体の割高さがともに高い時期でした。
- スプレッドが低いことは安心材料にならない信用市場のBAA-AAAスプレッドは、2000年と2007年の株価の天井の時点では低いままでした。2000〜2001年のハイテク株の暴落の間も、大きくは広がっていません。スプレッドが低いことは、安心材料にはなりません。
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| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象 | SOX指数(フィラデルフィア半導体指数)の日次終値、1995年以降 |
| 急落の条件 | 1日の騰落率が−5%以下 |
| その後の見方 | 急落した日の終値から、5営業日後(1週間後)・21営業日後(1か月後)・63営業日後(3か月後)・126営業日後(半年後)・252営業日後(1年後)の騰落率 |
| 集中下落 | 21営業日(約1か月)の間に、5%超の急落が3回以上起きた局面。3回目の急落の日を起点とし、続く急落は同じ局面として数える |
| 比べる相手 | 1995年以降のすべての営業日を起点にした場合(ふつうの日) |
※期間ごとに、その後のデータがそろっている回で集計しています(1週間後は178回、1か月後と3か月後は177回)。配当を含まない指数で、2026年6月23日までのデータで計算しています。
2026年6月23日に起きたこと
| 2026年6月23日(米国市場) | 騰落率 |
|---|---|
| SOX指数(半導体) | −7.87% |
| ナスダック総合指数 | −2.2% |
| S&P500 | −1.4% |
| ダウ | −0.09% |
半導体が8%近く崩れた日に、ダウはほとんど動いていませんでした。S&P500の11セクターのうち下落したのは4つ(情報技術−4.1%、資本財−2.0%、素材−1.5%、一般消費財−1.0%)だけで、生活必需品、ヘルスケア、公益事業、不動産、エネルギー、金融、コミュニケーションの7つは上昇しています。売られたのは市場全体ではなく、AI関連株、半導体株、PERの高い株という特定の一群でした。
検証1:1日5%以上の急落の後(180回)
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| 急落の後 上昇していた割合 | 急落の後 中央値 | ふつうの日 上昇していた割合 | ふつうの日 中央値 | |
|---|---|---|---|---|
| 1週間後 | 52.8% | +0.8% | 54.8% | +0.5% |
| 1か月後 | 64.4% | +4.0% | 58.7% | +1.8% |
| 3か月後 | 67.8% | +8.4% | 64.0% | +5.1% |
急落の直後の1週間は、上げたり下げたりで方向感が出にくく、ふつうの日と大差ありませんでした。1か月後と3か月後は、上昇していた割合も中央値も、ふつうの日をやや上回っています。ただし、SOX指数はもともと長期で大きく上昇してきた指数で、ふつうの日でも3か月後に上がっていたのは3回に2回近くあります。急落の後の数字だけを見て「3回に2回は戻る」と考えるのではなく、ふつうの日との差(1か月後で約6ポイント、3か月後で約4ポイント)で見るのが正確です。
ただし、この180回には、ITバブル崩壊、リーマンショック、コロナショックの最中に起きた急落も含まれています。「危機ではない急落」だけを抜き出した統計ではありません。そこで次に、急落の「頻度」を見ます。
検証2:1か月に3回以上の「集中下落」
2026年6月は、1か月の間に5%を超える急落が3回起きました。6月5日に−10.3%、6月16日に−5.7%、6月23日に−7.9%です。1995年以降、SOX指数がおよそ1か月の間に5%超の急落を3回以上記録した集中下落は、今回を含めて18回しかありません。その多くは、2000〜2002年のITバブル崩壊、2008年のリーマンショック前後、2020年のコロナショックといった、強いストレスの局面に集中していました。
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| 過去17回の集中下落の後 | 上昇していた回数 | 補足 |
|---|---|---|
| 1か月後 | 17回中10回 | 最悪−21.7%、最良+22.8% |
| 3か月後 | 17回中12回 | 最悪−35.2%、最良+45.0% |
| 半年後 | 17回中8回 | 最悪−40.9%、最良+64.6% |
| 1年後 | 17回中8回 | 最悪−55.2%、最良+189.7% |
3か月後までは上昇していた回が多かったものの、半年後、1年後になると、上昇していた回数は半分を下回りました。そして、結果の振れ幅が極端です。
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| 集中下落の時期 | 1年後までの動き | 後から見ると |
|---|---|---|
| 1999年2月 | 約+190% | 上昇相場の途中の調整 |
| 2020年3月(コロナショック) | 約+113% | 大底 |
| 2025年4月 | 約+137% | 大底 |
| 2000年4月 | 約−55% | 暴落の序章 |
| 2000年7月 | 約−43% | 暴落の序章 |
同じ集中下落というシグナルから、3倍近い上昇と、半値以下の下落という正反対の結果が出ていました。集中下落が「大底」で起きていた場合と、「暴落の途中」で起きていた場合が混ざっているからです。今回がどちらなのかを、この統計だけで言い当てることはできません。
検証3:1日8%以上の急落、大底と暴落を分けたもの
さらに大きな、1日8%以上の急落に絞って、その後1年・2年でどうなったか、途中でどこまで沈んだかを調べました。短期の反発は当てになりません。2000年4月14日の−11.6%の急落の後、SOX指数は3か月で+42%と大きく反発しましたが、その日の終値から2年以内に最大で60%下落しました。
1日8%以上の急落は、2026年6月5日の−10.3%まで24回ありました。このうち2年後の結果が出ている21回で、2年後もマイナスだったのは10回です。その10回はすべて、2000年4月から2001年9月のドットコムバブル崩壊の過程に集中していました。
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| 急落の日 | 下落率 | 終値÷200日線 | 1年後 | 2年後 | 2年以内の最大下落 |
|---|---|---|---|---|---|
| 1999年2月26日 | −8.3% | 1.24 | +190% | +68% | −3% |
| 2000年4月12日 | −8.3% | 1.44 | −42% | −44% | −66% |
| 2000年4月14日 | −11.6% | 1.23 | −36% | −38% | −60% |
| 2008年10月15日 | −8.9% | 0.65 | +41% | +53% | −27% |
| 2020年3月16日 | −15.9% | 0.79 | +136% | +145% | −1% |
| 2025年4月3日 | −9.9% | 0.77 | +106% | ― | −8% |
| 2026年6月5日 | −10.3% | 1.53 | ― | ― | ― |
※「終値÷200日線」は、急落した日の終値を200日移動平均で割った値で、1.53なら200日線より53%上(過熱度)。Yahoo Financeの日次データで計算しています。データの取得元によっては2008年9月29日の下落率が−8%を超えるため、回数が1回多くなります。
手がかりの1つが、急落する前にどれだけ過熱していたかです。2008年、2020年、2025年のように、すでに売られて200日線を下回っていた中での急落は、その後に回復しました。2026年6月5日は、200日線を53%も上回った状態での急落で、1日8%以上の急落の日としては1994年以降で最も高い過熱度でした。
もう1つが、米国株全体の割高さです。2年後もマイナスだった2000〜2001年の急落は、S&P500のCAPE(シラーPER)が1999年12月に過去最高の44.2倍を付けた、歴史的に割高な時期に起きていました。2026年6月時点のCAPEも約40〜42倍で、それに近い水準です。SOX指数の過熱と米国株全体の割高さが同時にここまで高かった中での急落は、1999〜2000年だけでした。
ただし、きれいな法則ではありません。同じように過熱していた1999年2月の急落の後は、さらに1年上げ続けて+190%になり、その後に崩壊しました。一方、2000年10月や11月の急落は、すでに200日線を大きく下回っていたのに、2年後もマイナスでした。過熱と割高は危険な場所を示しても、それがいつ崩れるかまでは教えてくれません。
信用市場は何を教えてくれるか:BAA-AAAスプレッド
株価がいくら下げても、それが銀行や企業のお金の貸し借りにまで波及しなければ、2008年のような金融システム全体の危機にはなりません。その健康状態を映すのが、信用力の高い社債(AAA)とやや劣る社債(BAA)の利回りの差、BAA-AAAスプレッドです。この差が広がるほど、市場が信用リスクを警戒していることになります。
危機のときも、1日で跳ねるわけではない
| 局面 | スプレッドの動き |
|---|---|
| リーマンショック(2008年) | 2006年の75bpから、2008年12月3日の350bpまで拡大。ピークの3か月前(2008年9月5日)でも157bpで、300bpを超えたのはリーマン・ブラザーズ破綻後の最後の数週間。株価の天井(2007年10月9日)の日は79bp |
| ITバブル崩壊(2000〜2001年) | ハイテク株の天井(2000年3月10日)の日は67bp。その後、2000年4月から2001年11月まで、67〜96bpの間にとどまった |
| 2021〜2022年 | 株価の天井の前後(2021年11月〜2022年1月)は61〜70bp |
※FREDの日次データ(DBAA−DAAA)で計算。2001年12月7日にスプレッドが87bpから128bpへ跳ねていますが、これはムーディーズのAAA利回りの対象が同日から変わった(公益債を除き、事業債のみに)ことによる段差で、市場の動きではありません。
ここから2つのことが分かります。1つは、スプレッドの水準は天井を当てる役には立たないことです。2000年、2007年、2021年の株価の天井は、どれもスプレッドが60〜80bp台と低い中で付きました。もう1つは、2008年のようにスプレッドがそれまでのレンジを明確に上に抜けてくるのは、株価の下落がすでに始まった後だということです。2000〜2001年のハイテク株の暴落のように、スプレッドがほとんど動かないまま株価が大きく下がることもあります。
2026年6月22日時点のスプレッド
| 項目 | 値 |
|---|---|
| 2026年6月22日 | 46bp(1986年以降で最も低い値) |
| 1986年以降の平均 | 約95bp |
| 直近1年の推移 | 68bp → 58bp → 46bp(低下が続いていた) |
スプレッドが低く穏やかなことは、「今が2008年型の信用危機の最中ではない」ことは教えてくれます。しかし、「だから高PER株は下がらない」とは教えてくれません。2000年のときも、天井でスプレッドは低く穏やかで、その後もほとんど広がらないまま、ハイテク株は半値以下になりました。
その後(2026年7月)
SOX指数はその後も下落し、2026年7月は月間で−20.61%でした。6月22日の最高終値から7月17日の終値までで−20.2%です。一方、BAA-AAAスプレッドはさらに低下し、2026年の最低は7月28日・29日の40bpでした。株が大きく下げても、信用市場が動かなかった局面です。
まとめ
SOX指数が1日で5%以上急落した後は、1週間後はふつうの日と大差なく、1か月後・3か月後はふつうの日をやや上回る程度でした。1か月に3回以上の集中下落になると、半年後・1年後に上昇していた回は半分を下回り、大底になった例と暴落の序章になった例に大きく分かれました。
信用市場のスプレッドは、2008年型のシステム全体の危機かどうかを確認するのに役立ちますが、水準が低いことは安心材料になりません。見るべきなのは水準ではなく、レンジを明確に上に抜けるかどうかで、それが起きるのは株価の下落が始まった後です。
この検証の限界
この記事の数字を読むときは、次の点に注意してください。
- 180回の急落は、危機の局面に固まって起きており、互いに独立した回ではありません。
- 集中下落は過去17回だけで、区切り方(何営業日の間に何回か、どの日を起点にするか)によって回数や結果は変わります。
- 期間ごとに、その後のデータがそろっている回だけで集計しています。
- 1日8%以上の急落は24回、2年後の結果が出ているのは21回と少なく、そのうち2年後マイナスの10回は同じ1つの暴落(2000〜2001年)の中で起きています。
- スプレッドの動きは、2000年と2008年の2つの危機を中心にした比較です。ムーディーズのAAA利回りは2001年12月7日から対象が変わっており、その前後の水準はそのままでは比べられません。
- 配当を含まない指数で計算しています。
- 本記事は過去データの検証であり、将来の値動きを保証するものではありません。また、特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。
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PDFライブラリを見る公開日:2026/10/06 | データの時点:SOX指数は2026年6月23日まで、BAA-AAAスプレッドは6月22日まで。「その後」の囲みは2026年7月
