金利が上がり続けた40年、株は何倍になった?米国株と日本株を「名目」と「実質」で検証
- 金利上昇の40年のS&P50014.0倍1941〜1981年、名目
- 同じ40年のS&P500の実質年率約2.1%金利低下期は約6.4%
- 1966〜1982年のダウの実質の価値約45%名目では約+33%
- 米国の金利上昇期の日経平均年約14.2%1949〜1981年。S&P500は約6.4%
一言結論
金利が上がり続けた40年でも米国株は名目で大きく上がったが、実質では年約2%にとどまった。日本株は米国の金利上昇期に強く、低下期に弱いという逆の動きをしてきた。
「金利が上がると、株は下がる」。教科書にも書いてある常識です。では、金利が何十年も上がり続けたら、株は下がり続けるのでしょうか。米国の長期金利が上がり続けた40年と、下がり続けた約40年を比べ、株価指数が何倍になったかを、数字の上の成績(名目)と、物価を差し引いた成績(実質)に分けて検証しました。日本株についても同じ時代で比べています。
この記事の結論
- 金利上昇の40年でもS&P500は名目14倍米国の長期金利が上がり続けた1941〜1981年の40年で、ダウは7.9倍、S&P500は14.0倍になりました。金利上昇の40年でも、株価指数は名目では大きく上がっています。
- 実質では年約2%、低下期は年約6%ただし、物価を差し引いた実質では、S&P500は年約2%でした。金利が下がり続けた1981〜2020年は実質で年約6%で、40年続けると約5倍の差になります。
- 1966〜1982年のダウは実質約45%に最も厳しかったのは1966〜1982年のダウで、名目では約33%上がりましたが、物価が約3倍になったため、実質の価値は約45%まで下がりました。
- 日本株は米国株と逆の時代に強い日本株は米国株と逆に動いてきました。米国の金利が上がり続けた1949〜1981年、日経平均は年約14%で、S&P500の年約6%を大きく上回りました。一方、米国の金利が下がり続けた1981〜2020年、日経平均は年約3%でした。
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※各年末の値で比較。S&P500は1957年に現在の形になったため、それ以前は前身の指数をつないだデータです。
※物価は米国の消費者物価指数(季節調整前)の各年12月の値で計算しています。
比べているのは、配当を含まない株価指数です。配当を含めると、どの時代も成績は上がります。
前回の金利トレンドは、約40年続いた
米国の長期金利(10年債利回り)は、大きく見ると、長い上昇と長い低下を交互に繰り返してきました。戦後は、1941年ごろから1981年まで約40年間上がり続け、1981年9月30日には終値で15.84%に達しました。そこから2020年まで約40年間下がり続け、2020年には1%を大きく下回る水準まで低下しました。
その後、米国の長期金利は大きく切り上がり、2026年には10年債が5%台に乗っています。日本の長期金利も、マイナス金利時代の2016年に付けたマイナス0.3%前後を底に、2026年8月には30年ぶりの水準まで上がりました。前回と同じような長い金利上昇の時代に入ったのかどうかは、まだ分かりません。ただ、前回の金利上昇の40年に株がどうなったかは、データで確かめることができます。
名目で見る:金利上昇の40年でも、株は上がった
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| 配当を含まない指数 | 金利上昇の40年(1941〜1981年) | 金利低下の約40年(1981〜2020年) |
|---|---|---|
| ダウ | 7.9倍(年約5.3%) | 35.0倍(年約9.5%) |
| S&P500 | 14.0倍(年約6.8%) | 30.6倍(年約9.2%) |
※各年末の値で比較。S&P500は1957年に現在の形になったため、それ以前は前身の指数をつないだデータです。
金利が上がり続けた40年でも、株価指数は下がるどころか、ダウで7.9倍、S&P500で14.0倍になりました。金利上昇の日の株安は、この40年の中に数え切れないほどあったはずですが、積み重ねてみれば大きく上がっています。少なくとも前回の40年のデータでは、金利上昇だけを理由に長期で株を手放すという判断は、結果と合いませんでした。
ただし、金利が下がり続けた約40年の成績は、桁が違います。ダウは35.0倍、S&P500は30.6倍です。直近40年の株式の成績には、40年間金利が下がり続けるという特殊な環境が、大きな追い風として働いていました。この時代の成績を、株式投資の標準と考えることには注意が必要です。
実質で見る:物価を差し引くと、差はさらに開く
100万円が110万円に増えても、物価が2割上がっていれば、買えるものはむしろ減っています。数字の上の増え方を「名目」、物価の上昇分を差し引いた増え方を「実質」と呼びます。
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| S&P500 | 金利上昇の40年(1941〜1981年) | 金利低下の約40年(1981〜2020年) |
|---|---|---|
| 名目の年率 | 約6.8% | 約9.2% |
| 米国の物価(消費者物価指数)の年率 | 約4.6% | 約2.6% |
| 実質の年率 | 約2.1% | 約6.4% |
※物価は米国の消費者物価指数(季節調整前)の各年12月の値で計算しています。
金利上昇の40年は、物価も年約4.6%上がる時代でした。名目の成績から物価を差し引くと、S&P500の実質の年率は約2%です。一方、金利低下の約40年は物価が穏やかだったため、実質でも年約6%ありました。実質年2%と年6%を40年続けると、指数の実質価値には約5倍の差がつきます。
金利上昇の時代に注意すべきなのは、1日の急落だけではありません。名目では増えているのに、実質では物価にじわじわ追い抜かれていく。気づきにくい形で進むのが、この時代の特徴でした。
最も厳しかった16年:1966〜1982年のダウ
| 1966年末〜1982年末 | 変化 |
|---|---|
| ダウ(名目) | 785.69 → 1,046.54(約+33%) |
| 米国の消費者物価指数 | 約3倍 |
| ダウの実質の価値 | 約45%に低下 |
ダウは1966年末から1982年末までの16年間で、名目では約3割しか上がりませんでした。チャートだけ見れば「横ばいで済んだ」ように見えます。しかし、この16年で米国の物価は約3倍になりました。物価で調整すると、ダウの実質の価値は約45%と、半分を下回る水準まで落ちています。指数の数字は上がっているのに、そのお金で買える量は大きく減っていた。これが、前回の金利上昇時代の後半に起きたことです。
今回は、スタート地点の割高さが違う
前回の金利上昇時代と今回とで大きく違うのが、株価の割高さです。割高・割安の物差しに、CAPE(シラーPER)があります。株価が、物価調整後の過去10年の平均利益の何倍まで買われているかを見る指標で、歴史的な平均は17倍前後です。
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| 時期 | CAPE | その後 |
|---|---|---|
| 1929年9月 | 32.6倍 | ダウは高値から89%下落。1929年の高値を取り戻すまで約25年 |
| 1942年(前回の金利上昇時代の入り口) | 約10倍 | 歴史的な割安からのスタート |
| 1982年 | 6.6倍 | ここから金利低下の約40年の大相場が始まった |
| 1999年12月 | 44.2倍(過去最高) | ITバブル崩壊でS&P500は高値から49%下落 |
| 2026年8月 | 42倍台 | 過去で今より高かったのは1999〜2000年ごろだけ |
CAPEが低い時に始まった時代ほど、その後のリターンは高く、CAPEが高い時に始まった時代ほど、その後のリターンは低くなる傾向がありました。前回の金利上昇時代は、CAPE約10倍という割安な水準から始まっていました。安く始まったからこそ、金利上昇の逆風の中でも名目14倍という結果になった面があります。今回は、42倍台という歴史的に高い水準からのスタートです。「金利上昇の時代」と「CAPE40倍超」が重なった前例は、データの中にありません。
ただし、CAPEは暴落の時期を当てる道具ではありません。ITバブルでは、CAPEは頂点の約3年前、1997年には1929年の水準(32.6倍)を超えていました。高い水準のまま、何年も上がり続けることがあります。CAPEが示すのは、明日の株価ではなく、そこから10年単位のリターンの見通しです。
※CAPEは年1月の値で、1997年1月が28.33倍、1998年1月が32.86倍です。
日本株は、米国株と逆に動いてきた
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| 時代(年末の値で比較) | 日経平均の年率 | S&P500の年率 |
|---|---|---|
| 米国の金利上昇期(1949〜1981年) | 約+14.2% | 約+6.4% |
| 米国の金利低下期(1981〜2020年) | 約+3.3% | 約+9.2% |
米国の金利が上がり続けた時代、日経平均は年約14%上昇し、S&P500の2倍以上のペースでした。逆に、米国の金利が下がり続けた時代は、日経平均は年約3%にとどまりました。日本株は、米国株ときれいに逆の時代に強かったことになります。
日本の物価の動きで時代を区切り直すと、違いはさらにはっきりします。
| 日本の時代区分 | 日経平均の年率 |
|---|---|
| インフレが当たり前だった時代(1949〜1989年) | 約+15.8% |
| 物価が下がり続けたデフレ期(1999〜2012年) | 約−4.5% |
| 物価上昇が定着した2022年以降(2021年末〜2026年8月17日) | 約+21% |
金利上昇と株高が両立してきた理由
堀江は、日本で金利上昇と株高が両立してきた理由として、次の3つを挙げています。1つ目は、物価が上がる時代には、企業の売上や利益も名目で膨らみ、株価は名目の利益に値段が付くこと。2つ目は、景気が良くなり、物価と賃金が上がった結果として金利が上がる「良い金利上昇」であれば、金利は株価を下げる原因ではなく、経済が正常化した結果であること。3つ目は、株価の上昇が利益の伸びに裏打ちされていることです。
ただし、金利上昇には、財政への不安などから起きる「悪い金利上昇」もあります。また、1949年からの40年の主役は高度経済成長そのもので、金利が株を押し上げたわけではありません。同じ金利上昇でも、その理由によって株価への影響は変わります。
まとめ
前回の金利上昇の40年で、米国株は名目で下がるどころか大きく上がりました。しかし実質では物価に削られ、年約2%にとどまりました。最も厳しかった1966〜1982年のダウは、名目では約33%上がったのに、実質の価値は約45%まで落ちています。
そして、直近40年の米国株の高い成績には、金利が下がり続けるという特殊な追い風がありました。一方、日本株は、米国の金利が上がり続けた時代や、物価が上がる時代に強かったという歴史があります。金利が上がる時代に入ったのかどうかを考えるときは、株価指数の名目の数字だけでなく、物価を差し引いた実質と、スタート地点の割高さの両方を見る必要があります。
この検証の限界
この記事の数字を読むときは、次の点に注意してください。
- 比べているのは、配当を含まない株価指数です。配当を含めると、どの時代も成績は上がります。
- S&P500は1957年以前は前身の指数をつないだデータです。
- 金利の上昇・低下の時代を比べられるのは、それぞれ1回だけです。今後の金利上昇の時代に同じ結果になるとは限りません。
- 日本の高度経済成長期の株高は、成長そのものが主な要因で、金利上昇が株を押し上げたことを示すものではありません。
- CAPEは米国株(S&P500)の指標です。日本株には公式の計算がありません。
- 本記事は過去データの検証であり、将来の値動きを保証するものではありません。また、特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。
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最終更新:2026/10/10 | データの時点:長期の比較は2020年末まで。日経平均の直近の数字は2026年8月17日まで
