
「20年持てば元本割れしない」は本当?S&P500・ナスダック・日経平均を、買った月の全パターンで検証
- どの月に買っても元本割れしなくなる年数:S&P50012年配当込み
- 同じく、ナスダック総合・ナスダック10017年価格
- 同じく、日経平均32年配当込み、1985年以降
- 1989年末に日経平均を買って20年−66.5%配当込み、100万円が約34万円
一言結論
「20年持てば必ずプラス」は過去の米国で成り立った経験則で、日本では20年で100万円が約34万円になった。境目の長さは、買った時点の割高さと対応していた。
「20年持てば、元本割れしない」。新NISAを始めた方なら、一度は聞いたことがある言葉です。では実際のデータでは、何年持てば元本割れしなくなったのでしょうか。
S&P500、ナスダック総合、ナスダック100、日経平均について、毎月末に買った全パターンを総当たりで計算し、「どの月に買っても元本割れしなくなる保有年数(境目)」を1年刻みで調べました。
この記事の結論
- 境目はS&P500 12年、ナスダック17年、日経平均32年どの月に買っても元本割れしなくなる保有年数は、S&P500が12年、ナスダック総合とナスダック100が17年、日経平均が32年でした(指数ごとにデータの期間が違う点に注意)。
- 日経平均1989年末からの20年は−66.5%日経平均を1989年12月末に買い、配当を再投資しながら20年持つと−66.5%で、100万円が約34万円になりました。配当込みで元の水準を取り戻したのは30.9年後の2020年11月です。
- 境目の長さは買った時点の割高さと対応境目の長さは、買った時点の割高さと対応していました。最悪の結果になったのは、ほぼすべてバブルの天井やその前後で買った人でした。
- 経験則であって法則ではない「20年で必ずプラス」は、過去の米国で成り立った経験則で、法則ではありません。また、指数の話であって、個別株には当てはまりません。
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| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 計算方法 | ローリング:毎月末に買い、指定の年数だけ持った場合の結果を、買った月ごとにすべて計算(S&P500なら900通り以上)。その中で最も悪かった人と最も良かった人を探す |
| 配当 | S&P500と日経平均は配当込み。ナスダックは1999年より前の公式な配当込みデータがないため、配当を含まない価格で計算 |
| その他 | インフレ調整前の名目の数字。一括投資、税金・手数料は考慮しない |
| データの期間 | S&P500は1950年から、ナスダック総合は1971年から、日経平均(配当込み)は1985年から、いずれも2026年5月末まで |
※以下の表で「年率」と書いたものは1年あたりの成績、それ以外は保有期間全体の累積の成績です。
S&P500(配当込み、1950年以降):境目は12年
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| 保有年数 | 最も悪かった人 | 最も良かった人 |
|---|---|---|
| 1年 | −43.3%(2008年2月に買い、リーマンショックを丸ごと浴びた) | +61.1%(1982年6月、歴史的な大底の直前に買った) |
| 5年 | 年率−6.7% | 年率+29.5% |
| 10年 | 年率−3.5%(1999年2月〜2009年2月) | 年率+19.4%(1990年8月〜2000年8月、100万円が591万円) |
| 12年 | 年率+0.5%(1999年末〜2011年末) | ― |
| 20年 | 年率+4.7%(100万円が252万円) | 年率+18.2%(1980年3月〜、100万円が2,812万円) |
| 30年 | 100万円が1,327万円 | 100万円が5,697万円 |
1年だけなら、同じ指数でも100万円が57万円になった人と161万円になった人がいます。この差を生んだのは銘柄選びではなく、「いつ買ったか」だけです。保有年数を延ばすとこの差は薄まり、12年持てば、1950年以降どの月に買った人も全員がプラスになりました。
興味深いのは、2000年3月という月です。1980年に買ってこの月に売った人は28倍で、20年保有の最高でした。一方、この月に買って2020年3月のコロナショックの底で売った人は2.5倍にとどまり、20年保有の最悪でした。同じ月が、ある人にとっては最高の出口で、ある人にとっては最悪の入り口だったのです。
ナスダック(価格、配当を含まない):境目は17年
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| ナスダック総合(1971年以降) | ナスダック100 | |
|---|---|---|
| 1年保有の最悪 | −59.8%(2000年3月末に買った) | −67.3%(2000年9月〜2001年9月) |
| 1年保有の最高 | +105.3%(1999年2月〜2000年2月) | +121.6% |
| 境目 | 17年(15年で一度マイナスが消えるが、16年で再びマイナスが出る) | 17年 |
| 30年保有の最悪 | ― | 年率+11.6%(1986年6月〜、100万円が2,691万円) |
ナスダック総合の境目が15年でいったん消え、16年で再び現れるのは、どちらも2000年の天井で買った人がいるためです。
2000年3月末にナスダック100を買った人
| 保有期間 | 結果 |
|---|---|
| 3年 | −76.8% |
| 10年 | −55.5%(10年待って、まだ半分も戻っていない) |
| 天井の水準の回復 | 2015年2月(14.9年後) |
※ナスダック100は、2000年3月から2002年9月までの2年半で、月末値で81.1%下落しました。
ナスダック100は、30年保有の最悪でも年率+11.6%と、今回調べた指数の中で「最悪」として最も強い数字でした。一方で、途中では指数が8割以上下がる局面があり、天井で買った人は元の水準まで約15年待つことになりました。長期のリターンは強烈ですが、その途中経過に耐えるのは簡単ではありません。
日経平均(配当込み、1985年以降):境目は32年
1989年12月29日の大納会、日経平均は38,915円の史上最高値を付けました。この月末に日経平均を買い、配当をすべて再投資しながら持ち続けた人の結果です。
| 1989年12月末に買った場合 | 結果(配当込み、累積) |
|---|---|
| 5年後 | −47.6% |
| 10年後 | −47.3% |
| 15年後 | −66.1% |
| 20年後 | −66.5%(100万円が約34万円) |
| 25年後 | −39.1% |
| 30年後 | −10.2%(100万円が約90万円) |
| 天井の水準の回復 | 2020年11月(30.9年後) |
買った月をすべて調べても結論は同じでした。20年保有の最悪は、1989年2月に買って2009年2月に売った人で、年率−6.0%(累積でおよそ−71%)です。31年保有の最悪は、1989年3月に買って2020年3月のコロナショックの底で売った人で、年率−0.5%(累積で約−14%)でした。32年で、ようやく全員がプラスになります。それでも最悪の人は、わずかなプラスでした。
配当は無力ではなかったが、足りなかった
配当を含まない株価だけで見ると、1989年の天井の水準を回復したのは2024年2月で、34.2年後でした。配当込みでは30.9年後です。「失われた34年」は、配当を受け取り続けた投資家にとっては「失われた約31年」でした。
4つの指数の境目を並べると
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| 指数 | 境目 | 計算の基準 | データの開始 |
|---|---|---|---|
| S&P500 | 12年 | 配当込み | 1950年 |
| S&P500(株価だけ) | 14年 | 価格 | 1950年 |
| ナスダック総合 | 17年 | 価格 | 1971年 |
| ナスダック100 | 17年 | 価格 | 1985年ごろ |
| 日経平均 | 32年 | 配当込み | 1985年 |
※ナスダックと条件をそろえて株価だけで比べると、S&P500の境目は14年です。日経平均の境目は、1985年以降に買った人だけで計算しています。32年の保有が2026年5月までに終わるのは、1985年から1994年前半に買った人だけで、その多くがバブル期の前後です。S&P500(1950年以降)とは、比べている時代が違います。
日経平均で最も良かった1年は、2025年5月末に買って2026年5月末に売った人の+78.5%でした。一方、30年保有の最高は1996年に買った人の100万円が488万円で、S&P500の30年保有の最悪(100万円が1,327万円)に届きません。ただし、日経平均の30年保有は1985〜1996年に買った人しかいないため、この比較もバブル期を含む限られた時代どうしの比較です。
なぜ、これほど差が生まれたのか
買った時点の割高さ
今回出てきた「最悪の人」は、リーマンショックの1年保有を除けば、ほぼ全員がバブルの天井かその前後で買った人でした。そして、その天井の割高さと、元本割れから抜け出すまでの年数は対応しています。
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| 天井の割高さ | その後 | |
|---|---|---|
| 米国(2000年) | CAPE(シラーPER)44.2倍、当時の過去最高 | S&P500の10年保有がマイナス、ナスダック100の回復まで14.9年 |
| 日本(1989年) | 1990年の東証一部の平均配当利回りは年0.49%。PERは、天井から4割下げた1990年末でも約40倍 | 日経平均の配当込みの回復まで30.9年 |
配当の厚さ
S&P500の20年保有の最悪は、配当込みで年率+4.7%、株価だけなら年率+2.4%でした。境目も、配当込みなら12年、株価だけなら14年です。配当というクッションが、元本割れしなくなる時期を2年早めていました。配当利回りが0.49%だった当時の日本には、このクッションがほとんどありませんでした。
新NISAで投資する人への3つの示唆
堀江は、このデータから次の3つを挙げています。
- 1つ目:「20年で必ずプラス」は、過去の米国で成り立った経験則であって、法則ではありません。同じ20年が、日本では100万円を34万円にしました。
- 2つ目:長期保有の正体は、時間が傷を癒すことではなく、高い買値に企業の利益と配当が追いつくのを待つことです。だから「いつ買うか」の重みは、長期投資でも消えません。薄まるだけです。見るべきは保有年数ではなく、買う時点の割高さです。割高さが決めるのは「いつ落ちるか」ではなく、「落ちた後、戻るのに何年かかるか」です。
- 3つ目:今回の結果は、指数だから成り立ちました。指数は、衰えた企業を外して伸びる企業を組み入れながら、天井を取り戻しました。個別株には、この新陳代謝がありません。何年待っても戻らないことが普通にあり、上場廃止になれば待つこともできません。
まとめ
どの月に買っても元本割れしなくなる保有年数は、S&P500で12年、ナスダックで17年、日経平均で32年でした。そして、最悪の結果の多くは、割高な天井やその前後で買った人に集中していました。時間はリスクを消す薬ではなく、高い買値を少しずつ薄めていく薬で、高すぎる買値には30年かけても効かないことがありました。
この検証の限界
この記事の数字を読むときは、次の点に注意してください。
- 指数ごとにデータの期間が違います。特に日経平均は1985年以降のデータで、長い保有年数ほど、バブル期の前後に買った人ばかりで計算されています。境目の年数を、指数どうしでそのまま比べることはできません。
- 毎月ずらして買った全パターンは、期間が大きく重なっており、互いに独立した結果ではありません。
- 割高さと回復年数の対応は、米国2000年と日本1989年の2つの例から見たもので、法則と言えるほどの数ではありません。
- 一括投資、税引き前、インフレ調整前の名目の数字です。ナスダックは配当を含まない価格で計算しています。
- 本記事は過去データの検証であり、将来の値動きを保証するものではありません。また、特定の商品の売買を推奨するものではありません。
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PDFライブラリを見る公開日:2026/10/06 | データの時点:各指数とも2026年5月末まで
