
押し目買いは勝率7割なのに、なぜ資産が増えない?日米4指数・約8万5,000営業日のデータで検証
- 勝率(S&P500、100日の安値で買う逆張り)75%高値買いは56%
- 複利年率(日経平均)1.6%と7.1%逆張りと高値買い
- 1回のトレードの最大損失約28〜45%逆張り。高値買いは約8〜16%
- 日経平均1989年の押し目買いが買値に戻るまで約35年価格指数
一言結論
勝率は押し目買いの圧勝なのに、複利年率は4指数すべてで高値買いが上だった。差を生んだのは、たった1回の負けの大きさだった。
株の買い方は、突き詰めると2つに分かれます。安くなったところを買うか、強くなったところを買うか。この2つを、S&P500、ダウ、ナスダック、日経平均の日米4指数、合計およそ8万5,000営業日分のデータで対決させました。
勝率は「安く買う」側の圧勝でした。ところが、最終的に資産を増やしたのは、勝率で負けている「強くなったら買う」側でした。なぜ勝率で勝つ買い方が、成績で負けるのか。上昇トレンドの中で押しを拾う、本来の押し目買いでも同じなのか。データで確かめます。
この記事の結論
- 勝率は逆張りが上でも複利年率は4指数すべて高値買いが上「過去100日の安値で買う」逆張りは、勝率で4指数すべて上回りました(S&P500は75%対56%)。しかし複利年率では、4指数すべてで「過去100日の高値で買う」側が上でした(日経平均は1.6%対7.1%)。
- 差は1回の負けの大きさ差を生んだのは、1回の負けの大きさです。1回のトレードの最大損失は、逆張りが約28〜45%、高値買いは約8〜16%でした。
- 上昇トレンド限定の押し目買いでも同じ上昇トレンドの最中だけに限った本来の押し目買いでも、勝率69〜72%に対して、複利年率は4指数すべてで高値買いが上でした(日経平均は1.7%対5.9%)。
- 相場が変わると成績が急変し、回復に長い時間がかかる押し目買いは、相場が変わると成績が急変します。そして、買値に戻るまでの時間は、S&P500の2007年で約5年、ナスダックの2000年で約16年、日経平均の1989年で約35年でした。
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| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象 | S&P500、ダウ、ナスダック、日経平均(日米4指数、合計84,975営業日) |
| データ | 日次の終値(2026年7月17日まで) |
| 売買 | シグナルが出た翌営業日の寄り付きで売買 |
| 比べる指標 | 勝率(利益で終わったトレードの割合)、複利年率(同じ資金をそのルールで運用し続けたとき、1年あたり何%のペースで増えたか)、1回のトレードの最大損失 |
※売買コストと配当は含んでいません。
検証1:安値を買うか、高値を買うか
最初のルールは、対等な直接対決です。
表は横にスクロールできます
| 逆張り(安値を買う) | 高値買い(強くなったら買う) | |
|---|---|---|
| 買う | 過去100日の安値まで下がったら | 過去100日の高値を超えたら |
| 売る | 過去50日の高値を超えたら | 過去50日の安値を割ったら |
表は横にスクロールできます
| 指数 | 逆張り 勝率 | 逆張り 複利年率 | 逆張り 最大損失 | 高値買い 勝率 | 高値買い 複利年率 | 高値買い 最大損失 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| S&P500 | 75% | +1.6% | −30.6% | 56% | +4.7% | −7.6% |
| ダウ | 68% | +0.3% | −45.3% | 44% | +3.3% | −16.1% |
| ナスダック | 73% | +1.3% | −27.9% | 60% | +8.1% | −12.9% |
| 日経平均 | 70% | +1.6% | −31.4% | 54% | +7.1% | −13.1% |
※最大損失は、1回のトレードでの最大の損失です。
勝率なら、4指数すべてで逆張りの圧勝です。しかし複利年率で比べると、4指数すべてで順位がひっくり返ります。日経平均は1.6%対7.1%で、4倍以上の差です。
なぜ逆転するのか:たった1回の負け
逆張りは、小さな勝ちを何度も積み上げます。これが勝率7割の正体です。ところが、下げ止まらない相場に当たると、出口である「戻り」が来ないまま抱え込み、1回の大負けが発生します。1回のトレードの最大損失は、逆張りが約28〜45%、ダウでは45%を失っています。
高値買いは、負ける回数こそ多いものの、安値を割った時点で機械的に降りるので負けは小さく、勝ちは伸ばし切ります。1回の最大損失は、4指数とも約8〜16%に収まっていました。
日経平均の実例です。2004年から2007年にかけて、逆張りは4勝し、累計で+26%になりました。ところが、その後の2007年の−6.6%と、2008年の−31.4%の2敗で、累計はマイナスに転落しています。何回か勝っても、次の1回の負けがそれまでの勝ちを消す。勝率が成績表にならない理由が、ここにあります。
検証2:上昇トレンドの中の、本来の押し目買いなら?
ここで、「それは押し目買いではない。押し目買いとは、上昇トレンドの中で押しを拾う買い方のことだ」と思った方もいるはずです。その通りです。検証1は、下落トレンドの途中でも買ってしまう「安値更新の逆張り」でした。そこで、本来の押し目買いを検証しました。
表は横にスクロールできます
| 押し目買い | 高値買い | |
|---|---|---|
| 買える期間 | 終値が200日移動平均線より上で、200日線が20営業日前より上(上昇トレンド中)だけ | 同じ |
| 買う | 過去10日の安値まで下がったら | 過去10日の高値を超えたら |
| 売る | 過去10日の高値を超えたら | 過去10日の安値を割ったら |
| 共通の非常口 | 200日線を割ったら売る | 同じ |
表は横にスクロールできます
| 指数 | 押し目買い 勝率 | 押し目買い 複利年率 | 高値買い 勝率 | 高値買い 複利年率 |
|---|---|---|---|---|
| S&P500 | 68.8% | +2.5% | 45.5% | +3.2% |
| ダウ | 69.6% | +2.4% | 46.6% | +3.5% |
| ナスダック | 71.5% | +2.9% | 47.1% | +6.0% |
| 日経平均 | 68.8% | +1.7% | 45.4% | +5.9% |
勝率の差はさらに広がりました。それでも複利年率では、4指数すべてで高値買いが上でした。日経平均は1.7%対5.9%で、3倍以上の差です。検証1の結果は、「下落トレンドの途中まで買ったから」ではありませんでした。
なお、期間を10日・20日・50日に変えた4指数×3通りの12通りすべてで、複利年率は高値買いが押し目買いを上回りました。勝率は、10日と20日では4指数すべてで押し目買いが上でしたが、50日ではS&P500とナスダックで逆転しています。
※200日線を割ったときの非常口は、両方の手法に同じ条件で付けています。押し目買いの方が発動しやすいのは、200日線に近い安値圏で買うという手法そのものの性質によるものです。
それでも押し目買いがやめられない理由:連勝記録
成績で負ける押し目買いを、なぜ人はやめられないのか。理由は、間違っているからではありません。長い間、正解に見えるからです。
| 検証1の逆張り(100日安値で買う)の連勝 | 2026年7月17日時点 |
|---|---|
| S&P500 | 2012年から11連勝(検証期間で最長、更新中) |
| 日経平均 | 2011年から17連勝(検証期間で最長、更新中) |
| 2026年3月の急落で買った場合(S&P500) | +7.0%で勝ち |
| 2024年8月の急落で買った場合(日経平均) | +11.7%で勝ち |
※連勝は検証1の「100日の安値まで下がったら買う」ルールでの集計です。検証2の上昇トレンド限定の押し目買いには、このような連勝はありません(2026年7月21日時点で、S&P500は1連勝、日経平均は直近の取引が−6.6%で負け)。
この10数年に投資を始めた方は、安値を買って負けた経験が、構造的にほとんどありません。成功体験だけが積み上がり、投資額は自然に増えていきます。
相場が変わった瞬間、同じ買い方の成績が急変した
日経平均で、「250日の高値から10%以上下がった日に買う」という単純なルールを、相場の局面で分けて比べました。
表は横にスクロールできます
| 日経平均 | 2003年〜2007年前半 | 2007年後半〜2009年3月 |
|---|---|---|
| 条件を満たした日数 | 166日 | 370日 |
| 買った1年後にプラスだった割合 | 96% | 31% |
| 1年後の騰落率の中央値 | +22% | −24% |
どこで買ってもほぼ正解だった時代から、一転して大半が負ける時代になりました。米国の指数でも同じ傾向でした。しかも、相場が悪くなると、買い場は減るのではなく増えます。下がり続けるので、毎日が「押し目」に見えるからです。手法は変わっていません。変わったのは相場だけです。
「安くなった」は「下げ止まった」ではない
高値から10%下落したところで買っても、日経平均はそこからさらに56%下落しました。ナスダックのITバブル崩壊では、さらに75%です。
最後の罠は「損失」ではなく「時間」
高値から10%下がったところで押し目買いした資金が、買値を回復し、その後二度と下回らなくなるまでの時間です。
| 高値から10%下落で買った場合 | 買値を回復し、二度と下回らなくなるまで |
|---|---|
| S&P500(2007年) | 約5年 |
| ナスダック(2000年) | 約16年 |
| 日経平均(1989年) | 約35年(価格指数) |
※日経平均1989年の買値は34,891円。2024年1月に一度回復した後に再び割れ、二度と下回らなくなったのは2025年4月(約35.2年)です。配当を含めれば、期間はより短くなります。
しかも、これは指数の話です。個別株には、戻る保証がありません。J.P.モルガンの調査では、ラッセル3000指数に一度でも採用された企業の4割超が、ピークから70%以上下落し、その後も回復していませんでした。指数で作った押し目買いの成功体験を、連勝で膨らんだ金額のまま個別株に持ち込むと、この「戻らない」側に当たる可能性があります。
まとめ:押し目買いで見るべき3つのこと
押し目買いをやめる必要はありません。ただし、勝率が高いという理由で投資額を増やしてはいけない、というのが堀江の考えです。押し目買いをするなら、次の3つを見る必要があります。
- 最大で何%負けるのか
- 相場環境が変わったことを、どこで認めるのか
- その損失に、自分の資金が耐えられるのか
勝率7割は、安心材料ではありません。投資額を増やしたくなるという意味で、むしろ最も注意が必要な数字なのかもしれません。
この検証の限界
この記事の数字を読むときは、次の点に注意してください。
- 売買コストと配当は含んでいません。
- 特定のルール(100日・50日、10日、200日線)での結果です。期間を変えた12通りでも複利年率の順位は同じでしたが、勝率の順位はルールによって変わります。
- 連勝記録は2026年7月17日時点のものです。
- 日経平均1989年の回復期間は、配当を含まない価格指数で計算しています。
- 本記事は過去データの検証であり、将来の成果を保証するものではありません。また、特定の銘柄や売買手法を推奨するものではありません。
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PDFライブラリを見る公開日:2026/10/06 | データの時点:2026年7月17日の終値まで(検証は7月21日)
