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山を越えて下がり始めたインフレ率の線と、株価チャートのイメージ

金利・インフレと株価

インフレがピークを付けた後、米国株はどうなった?1950年以降の7回で検証

  • 検証期間1950年〜2026年8月
  • 対象米国CPI(季節調整済み)の前年比、S&P500の月末終値
  • 公開日2026/10/06

一言結論

後から選んだインフレのピークの後は株価が上がりやすかったが、その時点で分かるルールにすると、成績はふつうの月とほぼ同じだった。

インフレと株価の関係には、2つの教科書的な考え方があります。1つは「株式は実物資産の持分なので、インフレに強い」。もう1つは「インフレが進むと中央銀行が利上げし、株は下がる」です。では、インフレがピークを付けた後、株価は実際にどう動いたのでしょうか。米国の消費者物価指数(CPI)とS&P500の1950年以降のデータで検証しました。

この記事の結論

  1. ピーク後12か月は7回中6回上昇・平均+14.3%1950年以降、CPIの前年比が5%以上でピークを付けたのは7回ありました。ピークの月末から12か月後のS&P500は、7回中6回上昇し、平均は+14.3%でした。ふつうの月を起点にした場合の平均(+9.4%)を上回っています。
  2. ピーク後もインフレは高止まりピークの後も、インフレ率はしばらく高い水準が続いていました。それでも株価は上がっており、市場は物価の「水準」より「方向」に反応していた、という見方と整合的です。
  3. 例外は2008年例外は2008年7月で、ピークの後に金融危機が重なり、12か月後は−22.1%でした。インフレのピークだけで株価が決まるわけではありません。
  4. その時点で分かるルールではふつうの月とほぼ同じただし、ピークは後から振り返って分かるものです。その時点で分かるルール(ピーク候補から3か月連続で低下を確認したら買う)では、ピークでなかった局面でも買うことになり、12か月後は9回中7回上昇、平均+10.0%と、ふつうの月とほぼ同じでした。
検証条件・計算方法を見る
項目内容
インフレ率米国のCPI(季節調整済み)の前年同月比
ピークの定義前年比が5%以上で、前後18か月の中で最も高かった月
株価S&P500の月末の終値(配当を含まない)。ピークの月末から3・6・12・24か月後の騰落率
比べる相手1950年以降のすべての月を起点にした12か月後の騰落率(ふつうの月)

※1948年1月のピークは、株価のデータの都合で除いています。

基本結果

インフレのピーク後のS&P500(7回)

表は横にスクロールできます

ピークの月CPI前年比3か月後6か月後12か月後24か月後背景
1951年4月9.60%−0.1%+2.3%+4.0%+9.8%朝鮮戦争
1970年2月6.42%−14.5%−8.9%+8.1%+19.1%1960年代後半のインフレ
1974年11月12.20%+16.6%+30.3%+30.4%+45.9%第1次オイルショック
1980年3月14.59%+11.9%+22.9%+33.2%+9.7%第2次オイルショック
1990年10月6.38%+13.1%+23.5%+29.1%+37.7%湾岸危機
2008年7月5.50%−23.6%−34.8%−22.1%−13.1%原油高騰、直後に金融危機
2022年6月8.98%−5.3%+1.4%+17.6%+44.3%コロナ後のインフレ
12か月後結果
インフレのピーク後(7回)7回中6回上昇、平均+14.3%
ふつうの月(1950年以降)909回中678回上昇、平均+9.4%

インフレのピークの後、12か月後のS&P500は7回中6回上昇し、平均もふつうの月を上回っていました。一方で、3か月後に下がっていた例も4回あり、ピーク直後に株価がすぐ反応したとは限りません。

この検証の核心

代表的な3つの局面

1974年:オイルショック

第1次オイルショックで、CPIの前年比は1974年11月に12.20%のピークを付けました。S&P500はその月末の69.97から、12か月後に+30.4%、24か月後に+45.9%上昇しています。一方、インフレ率は1975年12月でも7.13%、1976年12月でも5.04%と、高い水準が続いていました。

※元の動画では、1974年12月(12.10%)をピークとしています。データの改定により、現在のFREDのデータでは11月(12.20%)が最も高くなっています。12月を起点にすると、12か月後は+31.5%です。

1980年:戦後最高のインフレ

CPIの前年比は1980年3月に14.59%と、戦後最高を付けました。ボルカーFRB議長による歴史的な引き締めの最中です。S&P500はその月末の102.09から、12か月後に+33.2%上昇しました。1年後の1981年3月でも、インフレ率は10.61%でした。ただし24か月後は+9.7%にとどまり、1981年後半からの引き締めの影響で株価は調整しています。

2022年:コロナ後のインフレ

CPIの前年比は2022年6月に8.98%と、約40年ぶりの高さでピークを付けました。S&P500は3か月後に−5.3%と下落しましたが、12か月後は+17.6%、24か月後は+44.3%と上昇しています。

この検証の核心

ピークは、その時点では分からない

ここで注意が必要なのは、上の7回は、後から振り返って「前後18か月で最も高かった月」として選んだピークだということです。その月の時点では、それがピークかどうかは分かりません。CPIは翌月に発表され、ピークだったと分かるのは、その後に低い数字が続いてからです。

そこで、その時点で分かる情報だけで判断するルールを作りました。前年比が5%以上で、過去18か月の最高を付けた月を「ピーク候補」とし、その後3か月連続でその水準を下回ったら、発表を待ってピーク候補の4か月後の月末に買う、というルールです。このルールでは、後から見ると本当のピークではなかった局面でも買うことになります。

表は横にスクロールできます

ピーク候補買う月その12か月後本当のピークか
1951年4月1951年8月+7.5%ピーク
1969年4月1969年8月−14.6%違った(その後1970年2月まで上昇)
1970年2月1970年6月+35.7%ピーク
1974年11月1975年3月+23.3%ピーク
1980年3月1980年7月+7.6%ピーク
1989年5月1989年9月−12.3%違った(その後1990年10月まで上昇)
1990年10月1991年2月+12.4%ピーク
2008年7月2008年11月+22.2%ピーク
2022年6月2022年10月+8.3%ピーク

このルールでは、9回中7回が12か月後に上昇し、平均は+10.0%でした。ふつうの月の平均(+9.4%)とほぼ同じです。本当のピークだった7回では成績が良かったものの、ピークではなかった2回(1969年、1989年)はいずれもマイナスでした。後から選んだピークで見ると成績が良く見えても、その時点で使えるルールにすると、その差はほとんど残りませんでした。

追加検証

例外:2008年

2008年7月のピークは、原油価格の高騰によるものでした。その後、インフレは急速に低下しましたが、同時にリーマンショックによる金融危機が深刻化し、S&P500は12か月後に−22.1%、24か月後も−13.1%でした。インフレのピークアウトは株価の追い風になり得ますが、景気後退や金融危機が重なれば、それを打ち消すことがあります。

まとめ

1950年以降、米国のインフレ率が5%以上でピークを付けた7回では、12か月後のS&P500は7回中6回上昇し、平均+14.3%でした。ピークの後もインフレ率は高い水準が続いており、市場は物価の水準より方向に反応していた、という見方と整合的です。ただし、ピークは後から振り返って分かるもので、その時点で分かるルールにすると、成績はふつうの月とほぼ同じでした。また、2008年のように、インフレのピークアウトと同時に景気が崩れた例もあります。「インフレがピークを付けたから株を買う」という判断は、ピークの見極めが難しい分、過去の数字ほど簡単ではありません。

この検証の限界

この記事の数字を読むときは、次の点に注意してください。

  • インフレのピークは7回だけで、それぞれの時代背景は大きく違います。
  • ピークの定義(5%以上、前後18か月)や、その時点で判断するルールの決め方を変えると、選ばれる局面と結果は変わります。
  • CPIの過去の数字は改定されることがあり、ピークの月が変わる場合があります(1974年の例)。
  • 配当を含まない株価指数の月末の終値で計算しています。
  • 本記事は過去データの検証であり、将来の値動きを保証するものではありません。また、特定の商品の売買を推奨するものではありません。

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公開日:2026/10/06 | データの時点:CPIはFREDの季節調整済みの月次データ(2026年8月分まで)、S&P500は月末の終値