統計検証PDFライブラリ 無料会員登録
中央銀行の建物と、就任からの90日を示す目盛りのイメージ

金利・インフレと株価

新しいFRB議長の就任直後、株価はどうなった?ボルカーからパウエルまで5人の「最初の90日」を検証

  • 検証期間1979年〜2026年9月21日
  • 対象S&P500の日次終値、歴代FRB議長5人とウォーシュ議長
  • 公開日2026/10/06

一言結論

新しい議長の就任直後はたいてい平穏だったが、5回中1回は破壊的な下落に見舞われた。リスクは平らではなく、非対称だった。

FRB(米連邦準備制度理事会)の議長が交代すると、市場はまだ新しい議長の「言葉のクセ」を知りません。同じ「金利据え置き」でも、誰がどんなトーンで言うかによって、ひと言が大きく増幅されることがあります。では、過去の新議長の就任直後、株価は実際にどう動いたのでしょうか。1979年以降の5人について、S&P500の日次データで検証しました。

この記事の結論

  1. 5人中4人は90営業日の最大下落が数%以内就任から90営業日の間のS&P500の最大下落は、5人中4人が数%以内(ボルカー−4.2%、バーナンキ−3.5%、イエレン0%、パウエル−2.6%)でした。就任直後は、たいてい平穏でした。
  2. グリーンスパンだけ−32.8%ただし、グリーンスパンだけは就任2か月後にブラックマンデーに見舞われ、S&P500は就任日から最大32.8%下落しました。5回の中に、1回だけ極端な外れ値がありました。
  3. 発言や初FOMCの直後には短期で売られることがある新議長の発言や最初の政策イベントの直後には、短期で鋭く売られることがありました(ボルカーの緊急会合後10営業日で−8.7%、パウエルの初FOMCの5営業日後に−3.9%)。
  4. ウォーシュ議長はこれまで平穏な側2026年5月に就任したウォーシュ議長の場合、9月21日までの約4か月でS&P500の最大下落は−2.8%で、これまでのところ平穏な側に入っています。
検証条件・計算方法を見る
項目内容
対象ボルカー(1979年)、グリーンスパン(1987年)、バーナンキ(2006年)、イエレン(2014年)、パウエル(2018年)、参考としてウォーシュ(2026年)
2つの物差し①就任日の終値を基準にした、90営業日のS&P500の推移と最大下落 ②最初のFOMCなど政策イベントの直後の短期の反応
データS&P500の日次終値(配当を含まない)
基本結果

5人の「最初の90日」

表は横にスクロールできます

議長(就任)就任日のS&P50090営業日の間の最大下落就任から3か月後90営業日後
ボルカー(1979年8月6日)104.30−4.2%−3.0%+3.1%
グリーンスパン(1987年8月11日)333.33−32.8%−27.4%−27.1%
バーナンキ(2006年2月1日)1,282.46−3.5%+1.8%−3.5%
イエレン(2014年2月3日)1,741.890%(一度も就任日を下回らず)+8.2%+10.8%
パウエル(2018年2月5日)2,648.94−2.6%+0.9%+5.0%

※就任日の終値を基準にしています。

5人中4人は、就任から90営業日の間の最大下落が数%以内でした。新議長の就任そのものが、株価の大きな下落につながったわけではありません。その中で、グリーンスパンだけが突出しています。

この検証の核心

1人ずつ見ると

ボルカー(1979年):自ら嵐を起こした

インフレ率が11%を超える中で就任したボルカーは、就任から2か月後の1979年10月6日(土曜日)、予告なしの緊急会合を開き、金融政策の枠組みを根本から切り替えました。S&P500は、その直前の10月5日の終値から10営業日で8.7%下落しています。ただし、就任日を基準にした90営業日の最大下落は4.2%にとどまりました。嵐は鋭かったものの、深くはありませんでした。

グリーンスパン(1987年):5人の中でただ1人の破滅

1987年8月11日に就任したグリーンスパンの2か月後、10月19日にブラックマンデーが起き、ダウは1日で22.6%下落しました。今も破られていない、1日の最大の下落率です。S&P500は、就任日から数えて最も深いところ(1987年12月4日)で32.8%下落しました。グリーンスパンは大量の資金を市場に供給して崩壊を防ぎ、これがのちに「グリーンスパン・プット」と呼ばれる対応の原点になりました。

※ブラックマンデーの原因には諸説あり、新議長の発言が引き金になったわけではありません。

バーナンキ(2006年):言葉ひとつで足をすくわれた

2006年3月28日の初FOMCは平穏で、S&P500は翌日に0.7%、5営業日後に1.0%上昇しました。ところが約1か月後の4月29日、ホワイトハウス記者協会の夕食会で、テレビ局の記者に「市場は自分の議会証言を誤解している」という趣旨のことを話し、それが5月1日に報じられると株価は下落しました。バーナンキはのちに議会で、これを自分の判断の誤りだったと認めています。

イエレン(2014年):失言はあったが、傷は残らなかった

2014年3月19日の初めての記者会見で、イエレンは利上げ開始の時期を「およそ6か月後」と口にし、市場の予想より早いと受け取られて、株も債券も売られました。しかし動揺は一時的で、就任から90営業日の間、S&P500は一度も就任日の水準を下回らず、90営業日後には+10.8%でした。「新議長の就任直後は危ない」を否定する、最も強い例です。

パウエル(2018年):初FOMCの直後に売られた

2018年3月21日の初FOMCで、パウエルは0.25%の利上げを全会一致で決め、会見の評価も冷静でした。それでもS&P500は、初FOMCの日の終値から翌日に2.5%、5営業日後には3.9%下落しました。当時強まっていた貿易摩擦への不安が重なったためです。就任日を基準にした90営業日の最大下落は2.6%で、就任直後全体としては浅い傷でした。

この検証の核心

5人から見える「型」

  • 就任直後は、たいてい平穏でした。5人中4人は、90営業日の最大下落が数%以内です。
  • ただし、新議長の発言や最初の政策イベントの直後には、短期で鋭く反応することがありました。バーナンキのひと言、イエレンの「6か月」、パウエルの初FOMCです。
  • そして5回の中に、グリーンスパンという極端な外れ値が1回だけありました。これは「5回に1回の確率で暴落する」という意味ではありません。少ない事例の中に、1つだけ破壊的な結果があったということで、リスクは平らではなく、非対称だということです。
追加検証

その後:ウォーシュ議長(2026年5月22日就任)

2026年5月22日に就任したウォーシュ議長の最初のFOMC(6月16〜17日)では、ドットプロットの年末の中央値が引き上げられ、6月17日のS&P500は1.2%下落しました。翌日には半導体株の急騰で大きく戻しています。

就任日の終値7,473.47から2026年9月21日までの約4か月で、S&P500の最大下落は−2.8%(6月10日)、9月21日時点では+3.9%でした。これまでのところ、過去の5人で言えば平穏な側に入っています。なお、ウォーシュ議長のもとでFRBは9月16日に0.25%の利上げを決めています。

まとめ

過去5人の新FRB議長の就任直後は、多くの場合平穏で、90営業日の最大下落は数%以内でした。一方で、新議長の発言や最初の政策イベントの直後には短期で売られることがあり、そして5回のうち1回は、グリーンスパンのように破壊的な下落に見舞われました。新議長の就任を、それだけで「売り」や「買い」の理由にすることはできません。

この検証の限界

この記事の数字を読むときは、次の点に注意してください。

  • 事例は5人(参考のウォーシュ議長を含めて6人)だけです。5回の結果から、次の議長の結果を断定することはできません。
  • 時代背景は毎回違い、就任直後の株価の動きの多くは、議長以外の要因(景気、インフレ、貿易問題など)で決まっています。
  • 配当を含まないS&P500の終値で計算しています。
  • 本記事は過去データの検証であり、将来の値動きを保証するものではありません。また、特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。

この記事のタグ

堀江投資塾会員限定

統計検証PDFライブラリ

この記事の検証結果をまとめた保存版PDFをご用意しています。無料会員の方は、過去の統計検証レポートもまとめて閲覧・ダウンロードできます。

PDFライブラリを見る

まだ無料会員でない方はこちら

無料会員登録(無料)

この会員登録は、堀江投資塾の会員登録となります。登録すると、堀江投資塾からのさまざまなメールサービスや、無料動画の視聴サービスが受けられます。

公開日:2026/10/06 | データの時点:S&P500の日次終値。ウォーシュ議長の部分は2026年9月21日まで