
金利上昇をインバースETFで狙うとどうなった?TBF・TBT・TMVを2009年以降のデータで検証
- 2009年8月から持ち続けたTMV1,000万円→約65万円2026年9月21日
- ルール2(30日線割れで撤退)のTMV約1,314万円最大ドローダウン−15.8%
- ルール1(50日線・200日線)のTMV約1,260万円最大ドローダウン−56.9%
- ルール2で2022年を除いても3本とも1,000万円超TMVは約1,299万円
一言結論
金利が上がっても、インバースETFを持ち続けると大きく減った。早めに降りるルールが、落ち込みを最も小さく抑えた。
長期金利が上がると、長期国債の価格は下がります。その下落を、買うだけで利益に変えられる商品が「債券のインバースETF」です。米国の20年債利回りは2026年9月30日に5.68%と、2002年6月以来の高さになりました。では、過去に金利上昇をインバースETFで狙っていたら、資金はどうなったのでしょうか。2009年以降のデータで検証しました。
この記事の結論
- 持ち続けるとTMVは約65万円2009年8月から2026年9月まで、20年債利回りは4.18%から5.33%に上がりました。それでも、3つのETFをただ持ち続けると、1,000万円は−1倍のTBFで約615万円、−2倍のTBTで約243万円、−3倍のTMVで約65万円に減っていました。
- ルール1は2022年の1回頼み「50日線が200日線を上回ったら買い、下回ったら売る」ルールでは、3つとも1,000万円を上回りましたが、最大ドローダウンはTMVで−56.9%、利益のほとんどは2022年の1回の売買でした。
- ルール2は落ち込みが小さく、2022年を除いても1,000万円超同じ入口で「20年債利回りが30日線を割ったら撤退し、同じ上昇トレンドでは一度しか入らない」ルールでは、TMVの最大ドローダウンは−15.8%まで縮み、2022年を除いても3つとも1,000万円を上回りました。
- 3倍のTMVは倍率どおりに増えない−3倍のTMVは、倍率どおりには増えませんでした。日々の倍率のかけ直しと、国債の利息の影響で、長く持つほど値動きが3倍からずれていきました。
この検証は動画でも解説しています:動画を見る
検証条件・計算方法を見る
3つのインバースETF
| ETF | 内容 |
|---|---|
| TBF | 20年を超える米国債の指数に対して、日次で−1倍の値動きを目標とする |
| TBT | 同じ指数に対して、日次で−2倍 |
| TMV | 同じ指数に対して、日次で−3倍 |
※3つとも20年を超える米国債を対象にしているため、金利の判断には米国の20年債利回りを使いました。
売買ルールを決めて検証した
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 期間 | 2010年12月以降に始まった売買のうち、2025年までに終わったもの(比較を始める2009年8月20日の時点で、すでに50日線が200日線を上回っていたため、最初の売買は次に上回った2010年12月から) |
| 売買のタイミング | その日の終値で条件を確認し、翌営業日の終値で売買 |
| 価格 | 分配金を再投資した価格。ドル建てのリターンを1,000万円に置き換えて計算 |
| 最大ドローダウン | 保有中の日々の評価額で計算(保有していない間は資金が変わらないものとして計算) |
| 含まないもの | 為替、税金、売買のコスト |
| ルール | 入口と出口 |
|---|---|
| ルール1:持ち続ける | 20年債利回りの50日線が200日線を上回ったら買い、下回ったら売る |
| ルール2:早めに降りる | 入口はルール1と同じ。20年債利回りが30日線を割ったら売る。同じ上昇トレンドでは一度しか入らない |
| ルール3:入り直す | 50日線が200日線を上回っている間、30日線を割ったら売り、再び上回ったら買い直す |
金利は上がったのに、持ち続けると大きく減った
表は横にスクロールできます
| 2009年8月20日に1,000万円 | 2026年9月21日の金額 | 途中の最も少なかった時 |
|---|---|---|
| TBF(−1倍) | 約615万円 | ― |
| TBT(−2倍) | 約243万円 | ― |
| TMV(−3倍) | 約65万円 | 約15万円(2020年8月4日) |
※分配金を再投資した価格で計算。この間、20年債利回りは4.18%から5.33%に上昇(途中、2020年3月9日に0.87%まで低下)。
金利上昇を狙う商品を持ち、実際に金利もスタート時より高くなっていたのに、資金は大きく減っていました。理由は大きく2つあります。
理由1:国債には利息がある
同じ20年超の米国債を対象にしたETF(TLT)で見ると、2009年8月20日から2026年9月21日までに、価格は約15%下がった一方、受け取った利息を再投資すると約42%上がっていました。金利はスタート時より高くても、利息を含めた長期国債の値動きはプラスでした。インバースETFは、この利息も含めた値動きの逆に近い動きをするため、長く持つと利息の分が逆風になります。一方で、インバースETFは国債を空売りしているのではなく、スワップという取引で逆の値動きを作っており、手元の資金を短期の国債などで運用して短期の利息を受け取っています。短期金利がゼロに近かった2009〜2015年や2020〜2021年は、この受け取りがほとんどなく、長期国債の利息の分がそのまま重荷になりました。
理由2:毎日、倍率をかけ直す
−2倍や−3倍は、1日ごとの値動きに対する倍率です。たとえば、指数が1日目に10%下がり、2日目に11.1%上がって元に戻ったとします。TMVは1日目に30%上がり、2日目に33.3%下がるので、100万円は130万円になった後、約86.7万円になります。指数は元に戻ったのに、TMVは約13%減ります。同じ計算で、TBTは約7%、TBFは約2%減ります。上下を繰り返すほど目減りし、その影響は倍率が高いほど大きくなります。さらに、年間約1%の経費もかかります。
結果:3つのルールの比較
表は横にスクロールできます
| ルール(売買回数) | TBF | TBT | TMV | |
|---|---|---|---|---|
| ルール1(12回) | 1,000万円が | 約1,327万円 | 約1,432万円 | 約1,260万円 |
| 最大ドローダウン | −21.8% | −39.7% | −56.9% | |
| 利益が出た回数 | 6回 | 6回 | 6回 | |
| ルール2(12回) | 1,000万円が | 約1,109万円 | 約1,226万円 | 約1,314万円 |
| 最大ドローダウン | −5.3% | −10.3% | −15.8% | |
| 利益が出た回数 | 9回 | 9回 | 9回 | |
| ルール3(84回) | 1,000万円が | 約1,359万円 | 約1,684万円 | 約1,792万円 |
| 最大ドローダウン | −15.9% | −30.9% | −44.1% | |
| 利益が出た回数 | 27回 | 25回 | 27回 |
ルール1:3倍のTMVが一番増えなかった
ルール1では、−3倍のTMVの最終金額が3つの中で一番少なくなりました。保有期間の中央値は約150営業日(約7か月)と長く、その間の上下動で値動きが3倍からずれていったためです。もし12回の売買すべてでTMVがTBFのちょうど3倍の値動きをしていたら、1,000万円は約1,831万円になっていた計算ですが、実際は約1,260万円でした。
途中の落ち込みも大きく、TMVは2011年2月の高値から2017年6月の底まで、資金が半分以下(−56.9%)に減りました。さらに、利益のほとんどは2022年1月から2023年5月までの1回の売買(TMVで約+90%)でした。この1回を除くと、1,000万円はTBFで約1,007万円、TBTで約881万円、TMVで約664万円です。
ルール2:落ち込みが大きく縮んだ
入口は同じまま、出口を「30日線割れ」に早めると、保有期間の中央値は約10営業日に短くなり、最大ドローダウンはTMVで−56.9%から−15.8%に縮みました。TMVの12回の売買は、利益が出た9回が1回あたり約1〜10%(最大は2018年1〜3月の+10.0%)、損失の3回が約0.2〜6%(最大は2024年4〜5月の−6.1%)でした。
2022年の売買は、このルールではTMVで約+1%しか取れていませんでした。それでも、2022年を除いて計算し直すと、1,000万円はTBFで約1,105万円、TBTで約1,213万円、TMVで約1,299万円と、3つとも1,000万円を上回りました。
ルール3:最終金額は増えたが、落ち込みは約3倍
同じ上昇トレンドの中で何度も入り直すと、売買は84回に増え、最終金額は3つとも一番大きくなりました。しかし、最大ドローダウンはルール2の約3倍に広がり、TMVでは2023年10月の高値から2025年9月まで−44.1%減りました。利益が出たのは3回に1回程度で、TMVの平均は、負けた時が約−3.8%、勝った時が約+12.2%でした。小さな損を重ねながら、時々の大きな利益で取り返す形です。
まとめ
金利上昇を狙うインバースETFは、ただ持ち続けると、金利が上がっていても大きく減っていました。とくに−3倍のTMVは、日々の倍率のかけ直しと国債の利息の影響で、長く持つほど不利でした。売買ルールで見ると、中長期の金利上昇トレンドで入り、短期の勢いが崩れたら早めに降りる方法が、落ち込みを最も小さく抑えていました。方向を当てるだけでなく、どこで入り、どこで降り、降りた後に入り直すかまで決めることで、結果が大きく変わりました。
この検証の限界
この記事の数字を読むときは、次の点に注意してください。
- 50日線、200日線、30日線は、検証のために決めた条件で、将来も最適とは限りません。また、いくつものルールを試して成績の良いものを選ぶと、過去のデータに合わせすぎる恐れがあります。
- 売買ルールの売買回数は12回(ルール3は84回)で、2010〜2025年の金利の動き方に左右されています。
- 為替、税金、売買のコストは含めていません。日本から投資する場合は、ドル円の動きが損益に加わります。
- 本記事は過去データの検証であり、将来の値動きを保証するものではありません。また、特定の商品の売買を推奨するものではありません。
堀江投資塾会員限定
統計検証PDFライブラリ
この記事の検証結果をまとめた保存版PDFをご用意しています。無料会員の方は、過去の統計検証レポートもまとめて閲覧・ダウンロードできます。
PDFライブラリを見る公開日:2026/10/08 | データの時点:20年債利回りはFRED(DGS20)、ETFは分配金を再投資した価格(Yahoo Finance)。売買ルールは2025年までに終わった売買、持ち続けた場合は2026年9月21日まで
