金利が上がると銀行株は本当に上がる?日米の過去データで検証
- 日本:10年金利+10bpの月の銀行株約+1.9ポイントTOPIXに対する相対リターン
- 日本:金利が最も上がった月と最も下がった月の差約4.9ポイント同じ月の相対リターン
- 米国:20bp以上の金利上昇月に銀行株が上回った回数18回中8回2022年以降。それ以前は16回中13回
- 足元の銀行株の超過リターン(6/29〜9/28)日本+10.8/米国−8.8ポイント
一言結論
日本では金利が上がった月に銀行株がTOPIXより強かった。ただし、金利上昇を確認してから買っても明確な優位性はなく、米国では2022年以降この関係が見られない。
「金利が上がると銀行の利ざやが改善する。だから、金利上昇局面では銀行株を買えばいい」。投資の世界では、かなり当たり前のように言われている話です。実際、最近の日本では長期金利が上昇する一方で、銀行株は大きく上がっています。
では本当に、金利が上がれば銀行株を買えばいいのでしょうか。日本と米国の過去データを使って検証しました。
なお、この記事では、銀行株が値上がりしたかどうかではなく、市場全体(日本はTOPIX、米国はS&P500)より強かったかどうかで比べています。
この記事の結論
- 日本は金利上昇月に銀行株が強い(主に2020年以降)日本では、10年金利が上昇した月に、銀行株がTOPIXより強い傾向がはっきり確認できました。10年金利が10ベーシスポイント上昇した月は、銀行株のTOPIXに対する相対リターンが約1.9ポイント高いという関係です。ただし、この関係が強く表れているのは主に2020年以降、特に2022年末以降です。
- 確認してから買っても明確な差なし金利が大きく上がった月の後に銀行株を買っても、金利が大きく下がった月の後に買った場合と比べて、その後の成績に統計的に明確な差は確認できませんでした。
- 米国は2022年以降、以前のような関係なし米国では2022年以降、金利が上がった月に銀行株が強いという、それ以前のような関係は見られなくなっています。
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| 項目 | 日本 | 米国 |
|---|---|---|
| 銀行株 | 1615(東証銀行業株価指数に連動するETF) | KBE(銀行株ETF) |
| 比較対象(市場全体) | 1306(TOPIX連動ETF) | SPY(S&P500連動ETF) |
| 金利 | 日本の10年国債利回り(一部で2年金利も使用) | 米国の10年国債利回り |
| 長期統計の期間 | 2006年〜2026年8月 | 2011年11月〜2026年8月 |
- ETFのデータは、分配金を含まない価格のデータです。
- 2026年9月は集計時点で月の途中だったため長期統計には含めず、最後に足元の状況として別に確認しています。
- KBEは2011年10月にベンチマークが変更されたため、条件をそろえるために米国の検証期間は2011年11月からとしています。
- 本記事の「相対リターン」「超過リターン」は、銀行株が市場全体(日本はTOPIX、米国はS&P500)をどれだけ上回ったか(下回ったか)を表し、単位はポイントです。1ベーシスポイントは0.01%です。
結果1:日本では、金利が上がった月に銀行株が強い
金利の変化と銀行株の相対リターン
まず、10年金利が1カ月でどのくらい変化したのか、そして同じ月に銀行株がTOPIXをどのくらい上回ったのかを調べました。
回帰分析では、10年金利が10ベーシスポイント上昇した月は、銀行株のTOPIXに対する相対リターンがおよそ1.9ポイント高いという関係が出ました。この関係は統計的にもかなり明確です。
5つのグループに分けて比べる
もう少し直感的に見るために、すべての月を10年金利の動きによって、ほぼ同じ数ずつ5つのグループに分けました。金利が最も大きく下がったグループから、最も大きく上昇したグループまでの5つです。そのうち、両端のグループを比べた結果が次の表です。
| 10年金利の動き(月次) | 同じ月の銀行株のTOPIXに対する平均相対リターン |
|---|---|
| 最も大きく下がったグループ | 約−1.9ポイント |
| 最も大きく上昇したグループ | 約+3.0ポイント |
| 両者の差 | 約4.9ポイント(統計的にもかなり明確) |
日本では、金利が上昇している月に銀行株が市場平均より強いということです。これはイメージだけでなく、過去約20年の全期間で見ても、かなりはっきり出ています。ただし、後で見るように、その強さの多くは2020年以降、特に2022年末以降によるものです。
分配金の影響の確認
今回使ったETFのデータは分配金を含まない価格のデータなので、分配金の影響が結果を歪めていないかも確認しました。分配落ちが集中する7月をすべて除いて同じ分析をしても、10年金利10ベーシスポイントあたりの銀行株の超過リターンは約1.9ポイントで、ほとんど変わりませんでした。今回の結果が、単に分配金によって作られたものとは考えにくいです。
なぜ金利が上がると銀行株が強くなるのか
銀行は預金などで資金を集め、その資金を企業や個人に貸し出します。超低金利の世界では貸出金利も非常に低くなる一方で、預金金利をどこまでも下げることはできません。そのため、金利が極端に低い状態では、銀行の利ざやが圧迫されやすくなります。反対に金利が上昇すると、貸出や運用資産から得られる利回りが上昇し、それが銀行の収益改善につながることがあります。
実際、日銀が2026年7月に公表した「2025年度の銀行・信用金庫決算」でも、円金利の上昇などを背景に資金利益が増加し、非資金利益の増加もあって、コア業務純益(除く投信解約損益)が増えたとされています。資金利益とは、簡単に言えば、貸出や運用で得る金利収入から預金などの金利コストを引いた利益です。非資金利益は、手数料など金利以外の収益です。
一方で、金利上昇による債券売却損は利益を押し下げています。金利上昇は、銀行にとってすべてがプラスというわけではありません。それでも現在の日本では、金利上昇による収益改善が実際の決算に表れています。
結果2:金利上昇を確認してから買うと、その後の成績は?
ここまでの結果は、「金利が上がった月に銀行株が強かった」というものです。では、金利が上がったことを確認して、その後から銀行株を買えばいいのでしょうか。これは全く別の問題です。
そこで、10年金利の上昇が最も大きかったグループと、最も大きく下がったグループについて、その後の銀行株の成績(TOPIXに対する超過リターン)を比較しました。
| その後の期間 | 最上昇グループと最下落グループの差 |
|---|---|
| 翌1カ月 | 約+1.2ポイント |
| 3カ月後 | 約+1.0ポイント |
| 6カ月後 | 約−1.1ポイント |
| 12カ月後 | 約+0.5ポイント |
※いずれの期間も、統計的に明確な優位性は確認できませんでした。
金利が上がっている月に銀行株が強いことは確認できました。ところが、金利が大きく上がった月の後に銀行株を買っても、金利が大きく下がった月の後に買った場合と比べて、その後の成績に統計的に明確な差は確認できませんでした。金利が上がったことを確認してから買うことで、さらに高いリターンが得られるとまでは言えないということです。
少なくともデータ上では、銀行株の強さが表れているのは、金利が上がった後ではなく、金利が上がったのと同じ月です。ニュースを見て「10年金利が上がった。では銀行株を買おう」と考えた頃には、すでにかなりの部分が株価に反映されている可能性があります。
2020年以降の「約14.2ポイント」をどう見るか
2020年以降だけを見ると、少し違って見えます。10年金利の上昇が最も大きかったグループの月から12カ月後を見ると、銀行株はTOPIXを平均で約14.2ポイント上回っていました。これだけ見ると、金利上昇を確認してから買えばいいように思えます。
ところが、同じ2020年以降について、金利上昇という条件を一切付けず、どの月から銀行株を買っても、12カ月後の平均超過リターンは約16.5ポイントでした。金利上昇後に買った場合より、むしろ高い数字です。
| 2020年以降の買い方 | 12カ月後の平均超過リターン(対TOPIX) |
|---|---|
| 10年金利の上昇が最も大きかったグループの月に買う | 約14.2ポイント |
| 条件を付けず、どの月からでも買う | 約16.5ポイント |
2020年以降の各月から買ったとすると、12カ月後に銀行株がTOPIXを上回っていたのは68回中60回でした。この期間全体で、日本の10年金利は2019年末のほぼ0%から、2026年8月末には約2.94%まで上がっています。その間は、金利が上がった月を選ばなくても、銀行株は平均でTOPIXを大きく上回っていたわけです。
※12カ月の期間は1カ月ずつずれて重なっているため、この68回は互いに独立した結果ではありません。
金利上昇と銀行株高には強い関係があります。しかし、1カ月ごとの金利上昇というイベントを売買タイミングに使うことで、さらに成績が良くなるわけではありませんでした。
この関係はいつから強くなったのか
| 期間 | 10年金利の変化と銀行株の相対リターンの関係 |
|---|---|
| 2006年〜2012年 | 統計的に明確ではない |
| 2013年〜2019年 | 統計的に明確ではない |
| 2020年以降 | 以前より強くなっている |
| 2022年末以降 | 特にはっきり強い |
2022年12月は、日銀が長期金利の変動を許容する幅を、それまでのプラスマイナス0.25%程度から、プラスマイナス0.5%程度に広げた月です。
銀行株は昔から、金利が上がれば必ず上がるという単純な話ではありません。現在の日本は、長年続いた超低金利から金利のある世界へ移行している途中です。その中で銀行の収益構造そのものが変わり、銀行株の金利感応度が以前より高まっている可能性があります。
2年金利やイールドカーブとの関係(日本)
2年金利だけを見ると、銀行株との間にはかなり強い正の関係があります。ところが、2020年以降について10年金利と2年金利を同時に分析すると、2年金利には追加的な説明力がほとんどありませんでした。最近の日本のデータでは、銀行株との関係がより明確なのは10年金利です。
また、銀行株が上がるには必ず長短金利差が拡大しなければならない、という結果にもなっていません。教科書的な説明だけで考えない方がよさそうです。
米国の結果:2022年以降、以前のような関係が見られない
もし「金利が上がれば銀行株が強い」という単純な法則なのであれば、米国でも同じことが起きるはずです。米国では、銀行株ETFのKBEとS&P500連動のSPYを比較しました。
同じ月の動き
米国でも、10年金利の上昇幅が大きい月には、銀行株がS&P500より強くなる傾向があります。日本と同じように5つのグループに分け、金利上昇が最も大きかったグループと最も大きく下がったグループを比べると、同じ月の銀行株の相対リターンの差は約4.6ポイントでした。これは統計的にも明確です。
金利上昇を確認してから買った場合
| その後の期間 | 最上昇グループと最下落グループの差 |
|---|---|
| 翌1カ月 | 約+1.0ポイント |
| 3カ月後 | 約+1.7ポイント |
| 6カ月後 | 約+1.0ポイント |
| 12カ月後 | 約−5.6ポイント |
※いずれの期間も、統計的に明確な差ではありませんでした。
米国でも、金利が上がっている月に銀行株が強いことと、金利が上がったことを確認してから銀行株を買えばいいことは、別の話です。
期間による違い
米国では、金利が上がった月に銀行株が強いという関係が、期間によって大きく変わっています。基準を固定して、10年金利が1カ月で20ベーシスポイント以上上昇した月を比べました。
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| 期間 | 10年金利が1カ月で20bp以上上昇した月 | そのうち銀行株がS&P500を上回った月 |
|---|---|---|
| 2011年11月〜2021年末 | 16回 | 16回中13回 |
| 2022年以降 | 18回 | 18回中8回 |
2022年以降は、10年金利が1カ月で20ベーシスポイント以上上昇した18カ月のうち、銀行株がS&P500を上回ったのは8カ月でした。サンプル数は多くありませんが、それ以前のような「金利が上がった月に銀行株が強い」という関係は見られなくなっています。
イールドカーブ
銀行株では長期金利と短期金利の差が重要ではないか、という説明もよくあります。しかし今回のデータでは、イールドカーブの変化だけを使って、その後の銀行株の成績を説明できる明確な関係は確認できませんでした。長短金利差を見れば銀行株の先行きを予測できる、という結論にはしていません。
足元の日米比較(2026年9月28日終値時点)
2026年6月29日から9月28日までの動きを、日本と米国で比べました。
表は横にスクロールできます
| 6月29日〜9月28日 | 日本 | 米国 |
|---|---|---|
| 10年国債利回りの変化 | 約+45.9bp | 約+86bp |
| 銀行株ETF | 1615:約+12.4% | KBE:約−5.4% |
| 市場全体のETF | 1306:約+1.5% | SPY:約+3.3% |
| 銀行株の超過リターン | 約+10.8ポイント | 約−8.8ポイント |
※騰落率は四捨五入しているため、表の超過リターンは騰落率の差と一致しない場合があります。
※同じ期間に、日本の2年金利は約57.4bp上昇しました。また、8月26日から9月28日までの日本では、10年金利が約21.2bp上昇し、銀行株はTOPIXを約4.4ポイント上回りました。
日本では、長期金利が上がり、銀行株が市場平均を大きく上回っています。米国では、長期金利が日本より大きく上昇しているのに、銀行株は市場平均を大きく下回っています。同じ金利上昇でも、銀行株の反応は正反対です。そしてこの米国の動きは、2022年以降のパターンと一致しています。
なぜ日米で反応が違うのか
今回の統計だけで、原因を一つに特定することはできません。ただ、銀行にとって金利上昇が必ずしも一方向のプラスではないことは、実際の銀行収益を見ると分かります。
金利が上がると、貸出や運用資産から得られる利息収入は増えます。しかし同時に、預金者に支払う金利も上昇し、市場から資金を調達するコストも高くなります。さらに、すでに保有している固定金利債券の価格は下落します。
米国では、2022年の金利上昇初期には多くの銀行で利ざやが拡大しました。ところが2023年に入ると、預金金利や市場からの調達コストの上昇が貸出などの運用利回りの上昇を上回り、利ざやは縮小し始めました。同時に、金利上昇によって銀行が保有する債券に大きな含み損が発生し、銀行システムのストレス要因になりました。「金利が上がる→銀行の利益が増える→銀行株が上がる」という一本線には、必ずしもならないということです。なお、ここで挙げた2022〜2023年の動きは背景として紹介したものです。2026年6〜9月に米国の銀行株が市場平均を下回った原因そのものは、今回は検証していません。
一方、日本は長い間ほぼゼロ金利の世界にいて、そこから現在、金利が正常化しています。日本では2022年末以降も、10年金利が上昇した月に銀行株が強いという関係がはっきり続いており、日銀が公表している銀行決算でも、円金利上昇を背景とした資金利益の増加が確認されています。同じ金利上昇でも、その国の銀行がどういう局面にいるかによって、銀行株の反応は変わるということです。
まとめ
日本では、10年金利が上昇している月に銀行株が強いことが、過去約20年の全期間で見ると明確でした。10年金利が10ベーシスポイント上昇した月は、銀行株のTOPIXに対する相対リターンが約1.9ポイント高く、金利上昇が最も大きかったグループと最も大きく下がったグループでは、同じ月の成績に約4.9ポイントの差が出ています。ただし、2006〜2012年と2013〜2019年の期間だけでは統計的に明確ではなく、この関係が強く表れているのは主に2020年以降、特に2022年末以降です。
一方で、金利が大きく上がった月の後に買っても、大きく下がった月の後に買った場合と比べて、その後の成績に統計的に明確な差は確認できませんでした。最近の日本では、金利が上がった月を選んで買わなくても、銀行株はTOPIXを大きく上回っていました。金利上昇は銀行株の強さと密接に関係していますが、それ自体が単純な売買シグナルになっているわけではありません。
米国では2022年以降、金利が上がった月に銀行株が強いという、それ以前のような関係が見られなくなっており、現在も長期金利が日本以上に上昇する中で、銀行株はS&P500を大きく下回っています。
「金利が上がれば銀行株」という考え方は、完全な間違いではありません。ただ、それだけを見て銀行株を買えばいいというほど単純でもありません。現在の銀行株の強さを見る上では、「金利が上がったか」だけでなく、「その国がどの金利環境から、どこへ向かっているのか」まで見る必要があります。
この検証の限界
この記事の数字を読むときは、次の点に注意してください。
- ETFのデータは分配金を含まない価格のデータです。分配落ちが集中する7月を除いた分析で、結果がほとんど変わらないことは確認しています。
- 統計的に明確な関係は、原因を示すものではありません。日米の違いの原因は、今回の統計だけでは特定していません。
- 長期統計は2026年8月までです。足元の日米比較は2026年9月28日終値時点の数値です。
- 米国はKBEのベンチマーク変更のため、2011年11月以降を検証期間としています。また、米国の結果は均等加重型の指数に連動するKBEでの結果であり、米国の銀行株全体の結果とは限りません。
- 2020年以降の「68回中60回」などは、12カ月の期間が1カ月ずつずれて重なっているため、互いに独立した結果ではありません。
- 米国の2022年以降の比較(18カ月中8カ月)は、サンプル数が多くありません。
- 本記事は過去データの検証であり、将来の値動きを保証するものではありません。また、特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。
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最終更新:2026/10/10 | データの時点:長期統計は2026年8月まで、足元の日米比較は2026年9月28日終値まで
