
米国以外の株式は、S&P500急落の逃げ場になる?急落した46回の月と3回の暴落を、オルカンと米国を除く全世界株式で検証
- S&P500が1か月で5%以上下がった月46回1999年1月〜2026年9月の333か月、円換算
- 米国を除く全世界株式も下がった46回中45回オルカンは46回中46回
- リーマンショックの最大の下落率−66.3%米国を除く全世界株式。S&P500は−63.3%
- 1999年末→2009年末の100万円約124万円米国を除く全世界株式。S&P500は約83万円
一言結論
S&P500が急落した46回の月、米国を除く全世界株式も46回中45回下がり、3回の暴落の下落率もS&P500より大きかった。差が出たのは、10年以上の長い期間の成績だった。
オルカン(全世界株式)に入っている株の6割以上は、米国の株式です。では、米国以外の株式を持っておけば、米国の株が大きく下がったときの逃げ場になるのでしょうか。S&P500が1か月で大きく下がった月と、ITバブル崩壊・リーマンショック・コロナショックの3回の暴落で、米国以外の株式がどう動いたのかを、配当込み・円換算のデータで確かめました。
この記事の結論
- 46回中45回(オルカンは46回中46回)が一緒に下がった円換算のS&P500(配当込み)が1か月で5%以上下がった月は、1999年1月〜2026年9月の333か月で46回ありました。そのとき、米国を除く全世界株式(MSCI ACWI ex USA)は46回中45回、オルカンが連動を目指す指数(MSCI ACWI)は46回中46回、下がっていました。下がらなかった1回は、2008年2月です。
- 46回の平均の騰落率はほとんど変わらない46回の平均の騰落率は、S&P500が−8.16%、米国を除く全世界株式が−7.60%、オルカンが−7.99%で、ほとんど変わりませんでした。S&P500が1か月で10%以上下がった9回では、米国を除く全世界株式も9回中9回下がり、平均は−12.86%(S&P500は−12.51%)でした。
- 3回の暴落の下落率は3回ともS&P500より大きい(コロナショックはほぼ同じ)ITバブル崩壊、リーマンショック、コロナショックの3回の暴落では、高値からの最大の下落率は、3回とも、米国を除く全世界株式の方がS&P500より大きくなりました(コロナショックは−33.9%と−33.8%で、ほぼ同じ)。リーマンショックでは、S&P500が−63.3%、米国を除く全世界株式が−66.3%です。
- 差が出たのは10年以上の長い期間の成績差が出たのは、10年以上の長い期間の成績でした。1999年末から2009年末までの10年は、100万円がS&P500で約83万円、米国を除く全世界株式で約124万円になり、米国以外の方が上回りました。2009年末から2025年末までの16年は、S&P500で約1,395万円、米国を除く全世界株式で約477万円と、順番が逆になりました。
この検証は動画でも解説しています:動画を見る
検証条件・計算方法を見る
使ったデータ
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 米国を除く全世界株式 | MSCI ACWI ex USA指数(米国以外の先進国と新興国の株式) |
| オルカン | eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)が連動を目指す指数、MSCI ACWI指数(オール・カントリー・ワールド・インデックス)の値で計算。ファンドの基準価額ではありません |
| S&P500 | S&P500の配当込み指数(Yahoo Finance「S&P 500 (TR)」) |
| 円ドル相場 | 米連邦準備制度理事会(FRB)の円ドル相場(FREDに掲載、ニューヨーク正午の値)。ドル建ての指数に掛けて円に換算 |
| 研究 | フランソワ・ロンジャン、ブルーノ・ソルニック「国際株式市場の極端な局面での相関」(2001年) |
※MSCIの指数は、税金が引かれる前の配当を再投資した値(グロス)で、S&P500の配当込み指数と条件をそろえています。1か月の騰落率は月末の値で、3回の暴落の下落率は日々の値で計算しました。税金や手数料は含めていません。この記事の騰落率と金額は、ドル建てと書いたもの以外は、すべて円換算です。
オルカンと、米国を除く全世界株式
オルカンの愛称で知られるeMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)は、三菱UFJアセットマネジメントが2018年10月31日に設定した投資信託で、MSCI ACWI指数(配当込み、円換算ベース)に連動する投資成果を目指しています。MSCI ACWI指数に占める米国の株式の比率は、2026年9月30日時点で64.21%でした。
この記事の「米国を除く全世界株式」は、MSCI ACWI指数から米国を除いたMSCI ACWI ex USA指数です。日本や欧州などの先進国と、新興国の株式が入っています。オルカンのうち、米国以外の部分にあたります。
S&P500が1か月で5%以上下がった46回
円換算のS&P500(配当込み)が、月末の値で1か月に5%以上下がった月は、1999年1月から2026年9月までの333か月で46回ありました。そのとき、ほかの指数はどう動いたのでしょうか。
表は横にスクロールできます
| 46回の月(配当込み、円換算) | 下がった回数 | 46回の平均の騰落率 |
|---|---|---|
| S&P500 | 46回中46回 | −8.16% |
| 米国を除く全世界株式(MSCI ACWI ex USA) | 46回中45回 | −7.60% |
| オルカン(MSCI ACWI) | 46回中46回 | −7.99% |
| 参考:米国を除く先進国株式(MSCIワールド〈除く米国〉) | 46回中46回 | −7.52% |
※米国を除く先進国株式(MSCIワールド〈除く米国〉)は、米国を除く全世界株式から新興国を除いた指数です。動画の「米国を除く全世界株式」の数字(46回中46回、平均−7.52%、3回の暴落の下落率、10年・16年の金額など)は、この指数で計算したものです。この記事では、新興国も含むMSCI ACWI ex USAで計算し直しています。
米国を除く全世界株式は、46回中45回下がっていて、平均の騰落率もS&P500とほとんど変わりませんでした。46回中20回は、米国を除く全世界株式の方が、S&P500より大きく下がっています。
下がらなかった1回は、2008年2月です。この月、S&P500は−5.56%でしたが、米国を除く全世界株式は+0.44%でした。オルカンは−2.07%です。
※税金が引かれた後の配当で計算した指数(ネット)で数えても、46回中、米国を除く全世界株式は45回、オルカンは46回下がっていて、同じ結果です。
円高の影響を除いても、一緒に下がっていた
46回のうち38回は、同じ月に円高も進んでいました。円高の月は、円換算すると、米国の株式も米国以外の株式も、同じように押し下げられます。そこで、為替の影響を除いたドル建てでも数えました。ドル建てのS&P500(配当込み)が1か月で5%以上下がった月は36回あり、米国を除く全世界株式は36回中35回、オルカンは36回中36回下がっていました。一緒に下がっていたのは、円高のせいだけではありませんでした。
S&P500が10%以上下がった9回
S&P500が1か月で10%以上下がった9回に絞ると、米国を除く全世界株式も9回中9回下がり、平均の騰落率は−12.86%でした。S&P500の平均の−12.51%より、わずかに大きい下げです。オルカンも9回中9回下がり、平均は−13.00%でした。
リーマンショックの最中の2008年10月は、S&P500が−22.81%、米国を除く全世界株式が−27.65%、オルカンが−25.59%でした。
反対に、S&P500が大きく上がった月
S&P500が1か月で5%以上上がった月は64回ありました。米国を除く全世界株式も、オルカンも、64回中64回上がっています。米国の株式が大きく動く月には、米国以外の株式も、ほとんどの場合、同じ方向に動いていました。
下げ相場ほど、国どうしの値動きのつながりは強くなる
下げ相場で国どうしの値動きがそろいやすくなることは、研究でも確かめられています。フランスのビジネススクールの研究者、フランソワ・ロンジャンとブルーノ・ソルニックは、2001年に発表した研究で、世界の主要5か国の株式市場について、1959年1月から1996年12月までの月ごとのリターンを調べました。
その結果、株価が大きく下がる局面では、国どうしの値動きの相関(どれだけ同じ方向に動くか)が、値動きが正規分布に従うと仮定した場合に想定される水準よりも、はるかに高くなっていました。一方、株価が大きく上がる局面の相関は、想定どおりの水準でした。分散が一番必要な下げ相場で、国どうしの値動きがそろいやすくなるということです。
3回の暴落:高値から安値までの最大の下落率
今度は、月末の値ではなく日々の値を使って、3回の暴落で、高値から安値までどれだけ下がったのかを見ます。
表は横にスクロールできます
| 最大の下落率(配当込み、円換算) | S&P500 | オルカン(MSCI ACWI) | 米国を除く全世界株式 |
|---|---|---|---|
| ITバブル崩壊 | −43.3% | −43.5% | −44.7% |
| リーマンショック | −63.3% | −64.8% | −66.3% |
| コロナショック | −33.8% | −33.6% | −33.9% |
※高値と安値の日付は、ITバブル崩壊がS&P500 1999年7月9日→2002年7月23日、オルカン 2000年3月24日→2003年3月12日、米国を除く全世界株式 2000年3月27日→2003年3月12日。リーマンショックがS&P500 2007年7月19日→2009年3月6日、オルカン 2007年7月17日→2009年3月9日、米国を除く全世界株式 2007年10月11日→2009年3月9日。コロナショックがS&P500とオルカン 2020年2月20日→3月23日、米国を除く全世界株式 2020年1月17日→3月18日。円換算のため、高値の日付はドル建てとは違うことがあります。
3回とも、米国を除く全世界株式の下落率は、S&P500より大きくなりました。ただし、コロナショックは−33.9%と−33.8%で、ほぼ同じです。リーマンショックでは、それぞれの高値のときの100万円が、安値では、S&P500で約37万円、オルカンで約35万円、米国を除く全世界株式で約34万円まで減ったことになります。米国以外の株式を持っていても、暴落のときの下落率は、ほとんど小さくなりませんでした。オルカンの下落率がS&P500より小さかったのは、コロナショックの0.2%ポイント(−33.6%と−33.8%)だけです。
差が出たのは、10年以上の長い期間の成績
では、地域を分けて持っても、成績に違いは出なかったのでしょうか。違いが出たのは、10年以上の長い期間の成績でした。
表は横にスクロールできます
| 100万円が(配当込み、円換算) | S&P500 | オルカン(MSCI ACWI) | 米国を除く全世界株式 |
|---|---|---|---|
| 1999年末→2009年末(10年) | 約83万円 | 約100万円 | 約124万円 |
| 2009年末→2025年末(16年) | 約1,395万円 | 約838万円 | 約477万円 |
※月末の値で計算。1999年末→2009年末のオルカンは99.5万円。
ITバブル崩壊とリーマンショックが続いた1999年末から2009年末までの10年は、S&P500が約83万円に減ったのに対して、米国を除く全世界株式は約124万円に増えていました。この10年は、米国以外の株式の方が成績が良かったということです。オルカンは、ほぼ横ばいの約100万円でした。
ところが、その後の2009年末から2025年末までの16年では、順番が逆になります。100万円が、S&P500では約1,395万円、オルカンでは約838万円、米国を除く全世界株式では約477万円になりました。どの地域の成績が良いかは、この26年の間にも入れ替わっています。
まとめ
1999年1月からの333か月で、円換算のS&P500が1か月で5%以上下がった46回の月に、米国を除く全世界株式は46回中45回、オルカンも46回中46回下がっていました。平均の騰落率もほとんど変わらず、ITバブル崩壊、リーマンショック、コロナショックの3回の暴落では、米国を除く全世界株式の下落率は3回ともS&P500より大きくなりました(コロナショックはほぼ同じ)。米国以外の株式は、S&P500が大きく下がったときの逃げ場にはなっていませんでした。差が出たのは暴落の深さではなく10年以上の長い期間の成績で、米国の株式が振るわなかった10年は米国以外の株式の方が上回り、その後の16年はS&P500が大きく上回りました。
この検証の限界
この記事の数字を読むときは、次の点に注意してください。
- 1か月の騰落率は月末の値で計算しており、月の途中の値動きは含みません。また、「5%以上の下落」の線の近くにある月(例:2022年1月の−5.13%)もあり、線の引き方によって回数は変わります。
- 各指数の円換算は、ドル建ての指数の終値と、ニューヨーク正午の円ドル相場の組み合わせで計算しています。運用会社が公表する円換算の指数の値とは、小さな差が生じる可能性があります。
- オルカンの数字は指数の値で、ファンドの信託報酬などのコストは含みません。また、MSCIの指数は税引き前の配当(グロス)で計算しているため、税引き後の配当(ネット)で計算した値より、成績は少し高めに出ます。たとえば2009年末→2025年末のオルカンは、ネットでは約773万円です。
- 10年・16年の比較は、起点と終点の選び方によって、どちらの成績が良いかが変わります。1999年末は、ITバブル崩壊の前の高い水準でした。
- 対象期間は1999年1月から2026年9月までです。下がらなかった2008年2月のような例外もあり、将来も同じように動くとは限りません。
- ロンジャンとソルニックの研究は、1959年から1996年までの主要5か国の月次データによるものです。
- 本記事は過去データの検証であり、将来の値動きを保証するものではありません。また、特定の商品の売買を推奨するものではありません。
堀江投資塾会員限定
統計検証PDFライブラリ
この記事の検証結果をまとめた保存版PDFをご用意しています。無料会員の方は、過去の統計検証レポートもまとめて閲覧・ダウンロードできます。
PDFライブラリを見る公開日:2026/10/25 | データの時点:MSCIの指数データ(1998年12月末〜2026年9月末)、S&P500配当込み指数(Yahoo Finance、2026年9月30日まで)、円ドル相場(FRED)。オルカンの米国の比率は2026年9月30日時点
