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V字に反転する株価チャートの底と、底の付近で跳ね上がるVIXの線のイメージ

暴落・急落とバブル

大底は、その時点で見分けられる?VIX・RSI・投げ売りとチャートの底打ちを、1985年以降のナスダックで検証

  • 検証期間1985年1月〜2026年10月23日(VIXを使う検証は1990年以降)
  • 対象ナスダック総合指数(日足・週足・月足)
  • 公開日2026/10/25

一言結論

今回調べた指標の中に、下がっている途中で「ここが底だ」と言い当てられるものは、ありませんでした。当たる確率がはっきり高かったのは、チャートで底打ちの形ができるのを待つ方法です。その代わり、判断した時点では、株価はすでに底から16%〜37%(中央値)上がっています。

「VIXが30を超えたから、そろそろ底だ」「セリングクライマックスが来たので、大底を打った」。株価が大きく下げると、こうした声が一気に増えます。

2026年も、半導体株(SOX指数)は6月22日の高値から7月29日の安値まで28.7%下げ、日経平均も同じ期間に一時17.0%下げました。「もう底を打ったのか」という話題が相次いでいます。

では、大底は、その時点で見分けられるのでしょうか。大底のサインとしてよく紹介される指標と、チャートで底打ちを確かめる方法を、1985年以降のナスダック総合指数で比べました。

この記事の結論

  1. 大底ではVIXが高いが、VIXが高いから大底とは言えない大底ではVIXが高いが、VIXが高いから大底とは言えない。 1990年以降、ナスダックが20%以上下げて20%以上戻した底19回のうち15回で、底の日か直前の1週間にVIXは30を超えていました。ところが、下げている途中でVIXが30を超えた38回の局面のうち、そこが底だったのは3回だけでした。
  2. よく紹介される売られすぎのサインは、どれも半分に届かないよく紹介される売られすぎのサインは、どれも半分に届かない。 RSI、25日移動平均線からの乖離率、長い下ヒゲ、出来高を伴った投げ売りで、そこが底だった割合は0%〜33%でした。売られすぎから戻った日まで待っても、31%〜43%です。
  3. 当たっていたのはチャートの底打ち当たっていたのはチャートの底打ち。 週足で戻り高値を上抜けたら70%、上昇のN波動の完成まで待つと76%が本物の底でした。外れの多くは大暴落の途中で、月足の下落トレンドが始まっていたら月足で確かめると94%まで上がりました。
  4. 待つ代わりに、底からは離れる待つ代わりに、底からは離れる。 判断した時点の株価は、底から週足で16%〜19%前後、月足で33%〜37%前後上がっていました(中央値)。
検証条件・計算方法を見る

検証の条件

項目内容
対象ナスダック総合指数の日足(高値・安値はザラ場)
期間1985年1月〜2026年10月23日。VIXを使う検証は1990年以降
指標のサインを数える局面その日までの1か月(20営業日)のうちに、ナスダックが直近1年の高値から10%以上下げた日がある
指標のサインで「底だった」の判定サインが出た日までの1か月(20営業日)の安値を、その後の半年(126営業日)で一度も下回らなかった
重複の扱い10営業日以内に続けて出たサインは同じ局面として1回と数え、最初に出た日に買ったとして判定する
チャートの判定週足・月足で、下落の途中につけた戻り高値を上抜けたか、上昇のN波動が完成したか。判断した週(月)のあと半年の間に、底の安値を割らなければ底だったとする(詳しくは検証5・検証7)
基本結果

検証1:大底のとき、VIXは確かに高い

まず、恐怖指数とも呼ばれるVIXです。証券会社の解説などでは、30を超えると市場の不安が強まった状態、40を超えるとパニックの状態だと説明されることが多い指標です。

1990年以降、ナスダックが20%以上下げて、そこから20%以上戻した底(大きな底)は19回ありました。底の日とその直前の1週間で、VIXの終値が30を超えていたのは19回中15回(79%)です。

30を超えなかった4回は、2000年4月・5月・11月と2001年1月の底で、どれもITバブル崩壊の途中でつけた底でした。

ここまでなら、「VIXが30を超えたら大底が近い」と言えそうに見えます。

基本結果

検証2:VIXが30を超えた日に買うと、底だったのは38回中3回

では、逆から見ます。ナスダックが高値から10%以上下げている途中で、VIXの終値が30を超えた局面は38回ありました(10営業日以内に続けて30を超えた日はまとめて1回と数え、最初に30を超えた日に買ったとしています)。

VIXが30を超えた日に買った場合回数
そこが底だった38回中3回(8%)
その後半年以内に、もっと安い値段まで下げた38回中35回
VIXが30を超えた日の終値から、さらに10%以上下げた38回中19回(50%)
さらに20%以上下げた38回中6回(16%)

典型的なのが、リーマンショックです。リーマン・ブラザーズが破綻した2008年9月15日、VIXの終値は31.70で30を超えました。ところがVIXはそこからさらに上がり、11月20日には80.86に達しています。

ナスダックの底は、翌年の2009年3月9日の1,265.52でした。VIXが30を超えた9月15日の終値2,179.91から、さらに41.9%下げたことになります。

2026年3月は、VIXが初めて30を超えたのが3月27日で、ナスダックが今年の安値をつけたのは次の営業日の3月30日でした。ただ、この数え方では最初に30を超えた日に買ったとして、その後の半年の間に少しでも安値を割れば「底ではなかった」と数えるため、この回も底ではなかった側に入っています。

大底ではVIXが高くなっていることが多いのですが、VIXが高くなったから大底だとは言えません。VIXが30を超えた時点では、そこから大暴落になるのか、そこが底になるのかを区別できないのです。

※2026年10月23日のVIXの終値は19.45で、30を大きく下回っています。

基本結果

検証3:ほかの売られすぎのサインも、半分に届かない

ほかの指標も、紹介されている目安の数字のまま当てはめました。

表は横にスクロールできます

サイン回数底だった回割合
VIXが30を超えた38回3回8%
VIXが40を超えた(パニック)13回1回8%
RSI(14日)が30%以下61回6回10%
25日移動平均線から10%以上、下に離れた22回1回5%
長い下ヒゲ67回22回33%
出来高を伴った投げ売り8回0回0%

※VIXは1990年以降、ほかは1985年以降。長い下ヒゲは、下ヒゲ(始値と終値の低い方から安値まで)が実体の2倍以上、かつ前日の終値の1.5%以上の日。投げ売りは、1日で3%以上下げ、出来高が直近50営業日の平均の1.5倍以上に膨らんだ日。

長い下ヒゲは、この中では一番ましですが、それでも3回に1回ほどです。

セリングクライマックスは、大底の目印になっていない

大底のサインとして一番よく語られるのが、出来高を伴った投げ売り、いわゆるセリングクライマックスかもしれません。

ところが、ナスダックの終値が15%以上下げて15%以上戻した底29回のうち、その直前10営業日以内にこの投げ売りがあったのは3回(10%)だけでした。1987年10月のブラックマンデーの後(10月28日)、2001年9月の同時多発テロの後、2020年3月のコロナショックの底です。底の多くは、派手な投げ売りなしでできていました。

逆に、下げている途中で投げ売りが出た8回の局面は、最初に投げ売りが出た日に買うと、8回ともその後半年以内に、さらに安い値段まで下げています。

2026年3月30日にナスダックが今年の安値をつけた日も、出来高は直近50営業日の平均の1.04倍で、ほぼ普段どおりでした。

基本結果

検証4:売られすぎから戻った日まで待っても、半分に届かない

「売られすぎた日に買うのは早すぎる。戻ってきた日に買えば当たるのではないか」とも考えられます。これも確かめました。

表は横にスクロールできます

サイン回数底だった回割合
RSIが30%以下から30%を上回った日64回20回31%
VIXが30以上から30未満に戻った日46回20回43%
25日線からの乖離が10%以上まで広がったあと、5%より小さく戻った日22回7回32%

戻りを待っても、半分には届きませんでした。

この検証の核心

検証5:チャートで底打ちを確かめると、7割以上が本物の底

では、何なら当たっていたのか。答えは、チャートでした。

ここでは、底打ちを2つの段階で判断します。

  • 戻り高値の上抜け(第1段階):株価が下がっていくとき、途中で何度か反発します。反発してつけた高値が戻り高値です。最安値から反発した株価が、下落の途中につけた直前の戻り高値を上抜けたら、下落トレンドは終わったと判断します。
  • 上昇のN波動(第2段階):たとえば100まで下げて、戻り高値を上抜けて110まで反発したとします。そこから105まで押して、100を割らずに切り返し、110を超えて112まで上がれば、安値も高値も切り上がりました。これが上昇のN波動で、ここで上昇トレンドに変わったと判断します。戻り高値を上抜ける前に、すでに一度押して安値を切り上げていた場合は、戻り高値を上抜けた時点でN波動の完成です。

週足で、ナスダックが直近52週の高値から10%以上下げ、直近26週で一番安い週をつけた局面のうち、その週から26週以内に戻り高値を上抜けたものを数えました。判定は、判断した週の翌週から半年(26週)の間に、底の週の安値を下回らなかったかです。この記事では、これを「本物の底」と呼びます。

判断した時点本物の底だった割合
戻り高値を上抜けた27回中19回(70%)
上昇のN波動が完成した25回中19回(76%)
(参考)VIXが30未満に戻った日46回中20回(43%)
(参考)長い下ヒゲ67回中22回(33%)

指標で底を当てにいくより、チャートで底打ちを確かめる方が、はっきり当たっていました。

この検証の核心

検証6:チャートのサインが外れたのは、ほとんどが大暴落のとき

ただし、週足のサインも万能ではありません。外れた局面を並べると、はっきりした特徴がありました。

表は横にスクロールできます

外れた局面戻り高値超え上昇のN波動
1989年末〜1990年の下落(湾岸危機まで)2回1回
ITバブル崩壊(2000〜2001年)2回2回
リーマンショックの前(2008年)1回1回
チャイナショック(2015年)1回1回
2022年の利上げ局面の暴落2回1回
合計8回6回

週足の戻り高値超えが外れた8回のうち7回(88%)は、あとから振り返ると、高値から30%以上下げた大暴落の途中で出たサインでした。上昇のN波動まで待っても外れた6回のうち5回も、同じ大暴落の途中です。そのうち4回は、判断した週の終値から半年以内に、さらに30%以上下げています。

※大暴落は、底の時点から見て直近1年の高値から、その高値を取り戻すまでに30%以上下げた局面としました。あとから振り返った分類で、その時点では分かりません。

この検証の核心

検証7:月足の下落トレンドが始まったら、月足で確かめる

大暴落の局面で週足の底打ちのサインが出た14回のうち13回(93%)は、底をつけた時点で、月足でも下落トレンドが始まっていました。週足で戻り高値を上抜けても、月足で見れば、下落の途中の小さな戻りにすぎないことがあるのです。

大暴落かどうかは、その時点では分かりません。そこで目印にするのが、月足の下落トレンドです。

月足で直近の高値を上抜けたとき、その手前でつけていた一番安い値段を「主要な安値」と呼びます。この主要な安値を割り込んだら、月足の下落トレンドの始まりです。こうなったときは、底打ちも月足で確認します。

月足の下落トレンドが始まっていた局面で本物の底だった割合
週足で戻り高値を上抜けた21回中14回(67%)
月足で戻り高値を上抜けた16回中15回(94%)
月足で上昇のN波動が完成した16回中15回(94%)

月足で外れた1回は、どちらも1990年の同じ局面です。1990年1月の安値のあと、6月に月足の戻り高値を上抜けましたが、8月にイラクがクウェートに侵攻した湾岸危機が起き、1月の安値を割り込みました。

追加検証 1

検証8:待つことの代わりに、底からは離れる

待つことには、代わりに失うものがあります。

表は横にスクロールできます

判断した時点で、株価は底から何%上がっていたか(中央値)戻り高値を上抜け上昇のN波動
週足で判断16%前後19%前後
月足で判断33%前後37%前後

※判断した週(月)の終値と、底の安値を比べたもの。過去の全局面の中央値。

当たる割合を高めるほど、底からは離れます。

ただ、下がっている途中で底を予想して買うのは、自分の相場観に賭けることです。底打ちを待って買うのは、確率に賭けることです。底から離れた分は、損をしたのではありません。確実さを買うための保険料です。

追加検証 2

実例:リーマンショックの大底を、月足で確かめる

上昇のN波動で底打ちを確かめた場面を、実際に見てみます。リーマンショックの大底です。このときは月足の下落トレンドが始まっていたので、月足で見ていきます。

表は横にスクロールできます

日付出来事底からの位置
2009年1月6日下げる途中で最後につけた戻り高値:1,665.63—
2009年3月9日1,265.52まで下げる(この時点では底かどうか分からない)—
2009年4月16日1月の高値を上抜け=下落トレンドの終わり+32%
2009年6月11日1,879.92まで上昇—
2009年7月8日6月の安値(1,753.78)を下回り、1,727.05まで押す。3月の底よりはずっと上で、安値は切り上がる—
2009年7月16日6月の高値を上抜け=月足の上昇のN波動の完成+49%

その後、ナスダックが7月の押し安値を下回ることはなく、3月9日の安値が大底になりました。底で買うことはできませんでしたが、底だという判断は外れていません。

※底からの位置は、上抜けた高値の水準(1,665.63と1,879.92)を底の1,265.52と比べたもの。

追加検証 3

下がったところで買うと、成績はどうだったか

「米国株は長い目で見れば上がってきたのだから、どこで買っても最後は儲かったのではないか」と考える方もいると思います。確かに、米国の指数であれば、待てば戻ってきました。だからこの記事では、儲かったかどうかではなく、底だと判断したことが当たっていたかどうかで比べています。

儲かったかどうかで比べた検証は、別の記事「押し目買いは勝率7割なのに、なぜ資産が増えない?」で紹介しています。ナスダックの55年分のデータで、過去100日の安値まで下がったら買って50日の高値を超えたら売る逆張りと、過去100日の高値を上抜けたら買って50日の安値を割ったら売るトレンド型を比べました。

表は横にスクロールできます

ナスダック(1971年〜2026年7月17日)逆張りトレンド型
1年あたり平均で資金が増えた割合(複利)1.3%8.1%
1回の売買での最大の損失−27.9%−12.9%
上昇トレンドの期間だけに絞った場合(1年あたり・複利)押し目買い 2.9%高値買い 6.0%

※上昇トレンドの期間は、株価が上向きの200日移動平均線より上にある期間。押し目買いは過去10日の安値まで下がったら買い、高値買いは10日の高値を上抜けたら買う。調べた日米4指数のすべてで、1年あたりの資金の増え方は、高値を上抜けてから買う方が上回りました。

戻り高値を上抜けたら買う、上昇のN波動で高値を上抜けたら買うというのも、同じ考え方です。

そして、待てば戻るとしても、何年かかるかは分かりません。ITバブル崩壊のとき、ナスダックが高値から10%下がったところで買った人は、そこからさらに75%の下落を浴びました(終値ベース)。ナスダックがITバブルの高値を回復するまでには、15年かかっています。

まとめ

  • 大底のサインとしてよく紹介されているVIX、RSI、移動平均線からの乖離率、長い下ヒゲ、出来高を伴った投げ売りは、どれも半分も当たっていませんでした。
  • 当たっていたのは、チャートで戻り高値を上抜け、上昇のN波動が完成するのを待つ見方でした。月足の下落トレンドが始まったときは、月足で判断すると、当たる割合がさらに高くなっていました。
  • 待つ代わりに、底から離れた位置で買うことになります。それでも、底だという判断が当たる確率は、下がっている途中で当てにいくより、はっきり高くなっていました。

「VIXが30を超えたから大底だ」「セリングクライマックスが来たから底打ちした」という発信を目にしたら、その根拠が統計で確かめられているとは限らない、ということを思い出してください。

この検証の限界

この記事の数字を読むときは、次の点に注意してください。

  • 対象はナスダック総合指数だけです。個別株やほかの指数では、結果が変わる可能性があります。
  • 「底だった」かどうかは、その後の半年で判定しています。半年より後に安値を割った場合も「底だった」に入ります。
  • 大暴落の分類は、あとから振り返ったものです。外れたサインは安値を更新するため、大暴落の側に分類されやすくなります。
  • 戻り高値の取り方、N波動の判定、各指標の目安の数字を変えると、回数や割合は変わります。
  • 売買コスト・税金・配当は含めていません。過去のデータの検証であり、将来の値動きを保証するものではありません。投資の判断はご自身の責任でお願いします。

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